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情報漏えい原因調査レポート No.003

佐川急便の不正アクセスで、のべ最大約5,323万件の個人情報が流出したおそれ。何が分かり、何が分かっていないのか

荷物の配送状況を調べる「お荷物問い合わせサービス」に第三者が入り、約100日分の送り状データなどが流出した可能性がある。件数は重複を含むのべ最大約5,323万件で、実際の人数ではない。侵入の経路は公表されていない。第1報から第5報までの発表と報道をもとに、何が分かり、何が分かっていないかを整理する。

2026年10月26日 公開KEYRING編集部2026年10月26日時点の公開情報にもとづく読了の目安 約25分
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佐川急便株式会社(SGホールディングスグループ)sagawa-exp.co.jp

数字で見る今回の事案

出典は各数字の下に記載
流出した可能性のある個人情報
5,323万件

のべ最大の件数。重複を含み、実際の人数ではない。外部への流出を1件ずつ確かめた数でもない(第5報)

対象になった送り状データの期間
100日

2026年6月21日〜9月30日の約100日間。このシステムでの送り状データの保管期間にあたる(第5報)

対象の情報の種類
3種類

送り状データ、運賃契約の契約者情報、「スマートクラブ」の会員情報。カード情報とパスワードは含まれない(第5報)

発覚から第5報までの日数
23日

9月30日午前7時30分に発覚し、10月23日に件数を公表してサービスを再開した(第4報・第5報。日数は編集部が計算)

10月23日時点でも止まっているWebサービス
8つ

お荷物問い合わせAPI、飛脚宅配便受付、受取先変更など。再開時期は未定(第5報)

二次被害
未確認

10月23日時点で、個人情報の不正利用などは確認されていないとしている(第5報)

エグゼクティブ
サマリー

  1. 不正アクセスが確認されたのは、荷物の追跡サービスだった。佐川急便は9月30日、Webサイトの「お荷物問い合わせサービス」で第三者による不正アクセスを確認した。第4報では、このサービスを「インターネット貨物システム」と併記している。侵入の経路、どの弱点を突かれたのか、侵入がいつ始まったのかは、10月26日時点で公表されていない。
  2. 5,323万件は「人数」ではなく「のべ件数」だ。同じ人が複数の送り主から荷物を受け取ると、別の件として数えている。佐川急便は重複を一定程度整理(名寄せ)した最大件数だとし、実人数は引き続き調べている。種類ごとの件数も公表していない。
  3. 送り状データの対象期間は、システムの保管期間にあたる約100日だった。対象の送り状データは、このシステムが保管していた6月21日〜9月30日の分にあたる。手書きの送り状で預かった荷物は対象外とされた。
  4. 荷主の会社も、報告の当事者になる。送り状の個人情報は、配送を委託した出荷人(通販事業者など)が取得したものでもある。佐川急便は個人情報保護委員会への確報を、出荷人との連名で行う方向で準備している。
  5. 2026年7月の件とは別の事案だと、佐川急便は説明している。7月には「スマートクラブ」で、メールの設定の誤りにより約7万人分の情報が別の利用者に表示された。FAQは、7月の件は不正アクセスではなく、今回とは別の事案だとしている。

1はじめに

2026年10月23日、佐川急便は、Webサイトの「お荷物問い合わせサービス」への不正アクセスで、個人情報が最大約5,323万件流出した可能性があると発表しました。件数は重複を含み、同社はこの数が対象者の実人数を示すものではないと繰り返し書いています。京都新聞は、重複分を含むものの同社で過去最大の規模になる見通しだと報じました。

お荷物問い合わせサービスは、送り状に書かれた10桁または12桁の番号を入れると、荷物の配送状況がすぐに分かる仕組みです。日本経済新聞は、伝票に書いてある番号を入力すれば配送状況が分かる仕組みと説明しています。対象の情報には、2026年6月21日から9月30日までに佐川急便が預かった荷物の、依頼主とお届け先の氏名・住所・電話番号が含まれます。通販で商品を受け取っただけの人も、お届け先として対象になり得ます。

このレポートは、佐川急便の第1報から第5報、よくある質問(FAQ)、報道、個人情報保護委員会の資料をもとに、次の問いを順に扱います。KEYRINGの速報記事(No.0273)も、あわせてご覧ください。

  • 何が、いつ、どの順番で起きたのか
  • のべ5,323万件という数を、どう読めばよいのか
  • 侵入の経路について、何が公表され、何が公表されていないのか
  • 止まったサービスと、荷物を出す企業への影響は何か
  • 出荷人(荷主)の企業は、どんな手続きを求められるのか
  • 利用者と企業は、いま何を確かめればよいのか
調査の方法と範囲

2026年10月26日までに公開された情報を対象にしました。数値は出典の値をそのまま使い、編集部が計算した値はその旨を記しています。侵入の経路や不正アクセスの発生日時など、佐川急便が公表していないことは「公表されていない」と書き、推測では埋めていません。

2発覚から第5報までの経緯

発表は、9月30日の第1報から10月23日の第5報まで5回にわたります。最初は「アクセスしづらい状態」の告知で、翌日に個人情報流出の可能性を公表し、件数は3週間あまり後に示されました。

図表1佐川急便の発表と対応(2026年)
  1. 9月30日 7:30
    不正アクセスが発覚

    Webサイトの「お荷物問い合わせサービス」で、第三者による不正アクセスを確認した。不正アクセスが始まった日時は、第三者専門機関とともに調査中としている。

    出典:佐川急便 第4報
  2. 9月30日
    第1報:アクセスを一部制限

    対策の一環として同サービスへのアクセスを一部制限し、アクセスしづらい状態になる場合があると告知した。個人情報には触れていない。

    出典:佐川急便 第1報
  3. 10月1日
    第2報:個人情報流出の可能性を公表

    送り主・お届け先、運賃契約の契約者、「スマートクラブ」の会員の情報が流出した可能性があると公表。お荷物問い合わせや飛脚宅配便受付など、Webサービスの一部を止めた。件数と範囲は調査中とした。

    出典:佐川急便 第2報
  4. 10月1日 正午
    システムを外部から遮断。委員会に速報

    被害の拡大を防ぐため、インターネット貨物システムへの外部からのアクセスを遮断した。同じ日に個人情報保護委員会へ速報を行った。第3報で専用コールセンターを開設した。

    出典:佐川急便 第3報・第4報
  5. 10月9日
    第4報:件数を出さない理由を説明

    ほかのシステムやグループ会社のシステムへの影響は確認されていないと公表。確認が終わらない段階で件数を出すと実際と異なる情報が伝わるおそれがあるとして、件数の公表を見送った。

    出典:佐川急便 第4報
  6. 10月23日
    第5報:のべ最大約5,323万件。サービスを再開

    重複を一定程度整理した最大件数を公表し、お荷物問い合わせサービスを再開した。API、宅配便のWeb受付など8つのサービスは止めたまま。

    出典:佐川急便 第5報

3種類の情報と約100日分の送り状データという対象の枠組みは、第2報から第5報まで変わっていません。変わったのは、件数が示されたことと、対象期間が「9月30日から遡り約100日間」から「6月21日から9月30日」へと日付で示されたことです。

発覚から外部の遮断まで、約28時間半

発覚は9月30日午前7時30分で、同じ日の第1報ではアクセスの「一部制限」にとどめています。インターネット貨物システムへの外部からのアクセスを遮断したのは、翌10月1日の正午でした。発覚から遮断まで約28時間半です(時刻は第4報、間隔は編集部が計算)。この間に追加の取得があったかどうかは公表されていません。一部制限から全面遮断に切り替えた理由も、発表には書かれていません。

個人情報保護委員会への速報は10月1日で、発覚の翌日です。ガイドラインが示す目安(概ね3〜5日以内)より早く出しています。一方、件数の公表は発覚から23日後でした。第4報は、確認が終わらない段階で件数を出すと実際と異なる情報が伝わるおそれがあると説明しています。利用者の側から見ると、自分が対象かどうかを判断する材料がないまま、3週間あまり待つことになりました。

3お荷物問い合わせサービスの仕組み

佐川急便のサイトによると、問い合わせができるのは荷物の出荷日から60日間です。複数の番号をまとめて調べる機能もあります。

第4報は、このサービスを「お荷物問い合わせサービス(インターネット貨物システム)」と書いています。停止したサービスの一覧には、法人向けのお荷物問い合わせAPI、宅配便や往復便のWeb受付、受取先の変更、商品回収のサービスが並んでいます。

図表2公表された情報から見た、システムと情報の関係
利用者 送り状の番号を入力 インターネット貨物システム 第4報の表記。10月1日正午に外部から遮断 お荷物問い合わせサービス 問い合わせAPI・宅配便のWeb受付・ 受取先変更・商品回収など(停止中) 流出したおそれのある情報 送り状データ 6月21日〜9月30日 運賃契約の契約者情報 スマートクラブ会員情報 第三者 侵入の経路は公表されていない どの経路で情報に届いたかは公表されていない

佐川急便の第2報・第4報・第5報、同社サイト「追跡番号で検索する」、日本経済新聞(10月23日)をもとにKEYRING編集部が作成。3種類の情報がどのシステムに保存されていたか、どの順で取得されたかは公表されていない

荷物の追跡は、送り状の番号を入れるだけで使えるように作られています。日本経済新聞の説明では、この画面で分かるのは配送状況です。一方、第5報によると、流出した可能性があるのは氏名・住所・電話番号を含む約100日分の送り状データなどです。これらがどのシステムに保存されていたか、どの経路で取得されたかは公表されていません。

読むときの注意

佐川急便は、侵入の手口を公表していません。FAQは原因について「第三者専門機関の協力のもと、原因の調査および事実関係の確認を進めております」と答えています。このレポートでは、手口を特定する記述はしていません。

4何が、どこまで流出したおそれがあるのか

第5報が示した対象は3種類です。佐川急便は、種類ごとの件数を公表していません。同じ人の情報が重複して含まれるものが多く、対象となる人の実人数を正しく示すのが難しいためと説明しています。

図表3流出した可能性のある情報(第5報)
区分対象となる人項目
送り状データ6月21日〜9月30日佐川急便が預かった荷物のご依頼主とお届け先。スマートクラブの登録の有無は問わない。通販で受け取っただけの人も含まれ得る氏名、住所、電話番号
契約者情報顧客リスト佐川急便と運賃契約を結んでいる法人・個人氏名、住所、電話番号
スマートクラブ会員情報Webサービス「スマートクラブ」の登録者氏名、住所、電話番号、メールアドレス、スマートクラブの会員ID

出典:佐川急便 第5報、FAQ(10月23日更新)。法人の場合は担当者名など個人を識別できる情報を集計に含め、法人名だけの記録は含めていない。手書きの送り状で預かった荷物は対象外

含まれていない情報、まだ確認中の情報

佐川急便は、クレジットカード情報、パスワード、銀行口座の情報は含まれていないとしています。スマートクラブのパスワードも対象外です。一方、荷物の中身(品名)と配送履歴が含まれるかどうかは、FAQで「現在確認を進めております」と答えており、10月26日時点で結論は出ていません。品名が含まれていれば、何を買ったかが分かるため、詐欺の文面に使われやすくなります。

法人の情報の扱いも、FAQで説明されています。法人の場合は担当者名、住所、電話番号が対象になり得ます。第5報の集計では、担当者名など特定の個人を識別できる情報は件数に含め、法人名だけの記録は含めていません。企業の部署あてに届いた荷物でも、担当者の氏名が書かれていれば、個人情報として数えられていることになります。

のべ5,323万件の読み方

日本経済新聞によると、同じ顧客でも複数の送り主から荷物が届いていれば、別の件として数えています。第5報は、この数を「すべての情報が実際に外部へ流出したことを確認した件数ではなく、対象となる方の実人数を示すものでもありません」と書いています。佐川急便は名寄せを進めて、対象となる人の数をより正確につかむとしています。

図表45,323万件という数に付いている3つの留保
のべ件数

同じ人が複数回含まれる。送り状データには「相当数の重複」が残っている

最大の値

重複を一定程度整理したうえでの、現時点の最大件数。名寄せが進めば変わり得る

可能性の段階

外部への流出を1件ずつ確かめた数ではない。二次被害は確認されていない

出典:佐川急便 第5報、日本経済新聞(10月23日)

送り状データの対象期間は、システムの保管期間の約100日

送り状データの対象期間は、「当該システムの送り状データの保管期間に基づく」と注記されています。お荷物問い合わせで番号を調べられる期間は、出荷日から60日間です。第5報は、外部からのアクセスの遮断とあわせて、受取先変更や往復便、商品回収などのWebサービスも停止したとしています。約100日の保管がどのサービスや業務のためのものかは公表されていません。

図表5送り状データの対象期間と、問い合わせできる期間
送り状データの対象期間(このシステムでの保管期間) 約100日 6月21日〜9月30日 お荷物問い合わせで調べられる期間(出荷日から) 60日 9月30日 7:30 発覚 10月1日 正午 外部から遮断 6月21日8月1日ごろ9月30日

出典:佐川急便 第4報・第5報、同社サイト「追跡番号で検索する」。2本の帯の長さは日数の比に合わせた。60日の帯は、9月30日に出荷した荷物を起点に戻した場合の目安で、編集部が描いた

5分かっていること、公表されていないこと

10月26日時点で、原因の中心にあたる侵入の経路と手口は公表されていません。再発防止策も「システムのアクセス管理や監視体制の強化など」と方向を示した段階です。

図表6公式発表で確認できる範囲(10月26日時点)
項目公表されていること
侵入の経路・手口公表されていない。FAQは「原因の調査および事実関係の確認を進めております」
不正アクセスの発生日時公表されていない。発覚は9月30日午前7時30分。発生日時は調査中(第4報)
影響の範囲インターネット貨物システム以外のシステムと、グループ会社のシステムへの影響は確認されていない(第4報)
件数のべ最大約5,323万件。種類ごとの件数と実人数は公表されていない
品名・配送履歴含まれるかどうかを確認中(FAQ)
二次被害不正利用などは確認されていない(第5報)
当局への届け出10月1日に個人情報保護委員会へ速報。警察にも相談している(FAQ)
本人への通知対象者の確認ができ次第、順次案内する。個別の案内が難しい人には、公表をもって通知に代える(第5報)
再発防止策第三者専門機関の調査結果を踏まえ、アクセス管理や監視体制の強化などを進めている。具体的な内容は公表されていない

出典:佐川急便 第1報〜第5報、FAQ(10月23日更新)

第4報には、今後の見直しの対象として「システム構成、アクセス制御、脆弱性管理、権限管理および監視体制」が挙がっています。どこに問題があったかを示したものではなく、点検する範囲を並べたものと読むのが妥当です。Webアプリケーションの脆弱性の点検には、IPAの「安全なウェブサイトの作り方」などの公開資料があります。

6止まったサービスと、荷主への影響

集荷と配達は止まっていません。止まったのは、Webで受け付けるサービスと、法人が自社のシステムから配送状況を取り込むAPIです。お荷物問い合わせサービスは10月23日に再開しましたが、ほかの8つは10月26日時点で再開時期が決まっていません。

図表7停止したWebサービスと再開の状況
サービス状況(第5報・10月23日時点。10月26日時点で更新なし)
インターネット貨物のお荷物問い合わせ10月23日に再開
お荷物問い合わせAPI停止中。法人への個別の案内は確認中
飛脚宅配便受付・飛脚往復便受付・飛脚往復便(ゴルフ)受付停止中。電話での集荷依頼は受け付けている
受取先変更(事前・不在発生後)停止中
商品回収返金サービス・回収くん停止中
スマートクラブ利用できるかどうかを確認中(FAQ)

出典:佐川急便 第2報・第5報、FAQ(10月23日更新)。LINEからの問い合わせは使えるが、確認できるのは配送状況だけとしている(第4報)

荷物を出す企業にとっては、2つの影響があります。1つは業務の影響で、APIの停止により、自社の画面やメールで顧客に配送状況を知らせる仕組みが使えなくなった企業があると考えられます。もう1つは法令上の影響で、自社の顧客の情報が委託先から流出したおそれがあるため、個人情報保護委員会への報告と本人への通知の当事者になります(9章)。佐川急便はFAQで、出荷人に送り状発行システムで対象期間の出荷履歴を確かめる方法を案内しています。

FAQによると、出荷履歴は「e飛伝Ⅲ」「Biz-LogiWEB」「Biz-LogiWEBⅡ」などの送り状発行システムで調べます。Biz-LogiWEBは検索の範囲が3か月以内、Biz-LogiWEBⅡは1か月以内のため、6月21日〜9月30日を何回かに分けて検索する必要があります。個人の利用者は、集荷の依頼を電話で受け付けているほか、LINEからの問い合わせで配送状況を確かめられます(第4報)。

7佐川急便のWebサービスで公表された過去の事案

佐川急便のWebサービスでは、今回のほかに、2025年10月と2026年7月に性質の違う事案が公表されています。FAQは、2026年7月の件と今回は別の事案だと明記しています。

図表8佐川急便のWebサービスで公表された事案(今回を含む)
公表サービス内容
2025年10月27日スマートクラブ10月15日17時22分〜16日12時、第三者が不正に入手したとみられるIDとパスワードで不審なアクセスがあり、アカウントへの不正ログインが判明。IPアドレスをブロックし、マイページの利用に2段階認証を必須にした
2026年7月19日スマートクラブシステム不具合の復旧作業で配達予定通知メールの設定を誤り、約7万人分の氏名、メールアドレス、お問い合せ送り状No.が別の利用者のメールに表示された。不正アクセスではない
2026年9月30日〜お荷物問い合わせサービス第三者による不正アクセス。のべ最大約5,323万件の個人情報が流出した可能性

出典:佐川急便「佐川急便スマートクラブ不正アクセスの検知について」(2025年10月27日)、INTERNET Watch(2026年7月21日)、佐川急便 FAQ・第5報

原因として公表されているのは、第三者が不正に入手したとみられるIDとパスワードによるログイン、作業時の設定の誤り、今回の不正アクセス(経路は非公表)で、それぞれ違います。3件の間に関係があることを示す情報はありません。

宅配便を装う連絡は、以前から続いている

佐川急便は、同社を装う迷惑メールやSMSの事例を2012年から掲載し続けています。2025年10月1日の更新では、迷惑メールの問い合わせが「急増」していると書き、「当社ではお荷物の集配についてショートメール(SMS)によるご案内は行っておりません」と明記しています。過去の偽サイトの事例には、電話番号の入力や本人確認書類の提出を求めるものがありました。今回流出したおそれのある氏名・住所・電話番号は、こうした連絡を本物らしく見せる材料になり得ます。

同じページは、宅配便業者をかたる偽のSMSで偽サイトに誘う手口(スミッシング)について、情報処理推進機構(IPA)の注意喚起も案内しています。不審なアプリを入れさせる手口や、iPhoneに不審な「構成プロファイル」を入れさせる手口が、2018〜2019年に取り上げられました。偽サイトとの見分け方として、佐川急便は、URLが異なること、電話番号の入力や本人確認書類の提出、Apple IDとパスワードの入力は必要ないことを挙げています。

8配送の情報が狙われたほかの事案

配送に使う情報は、氏名・住所・電話番号がそろい、日々大量に入れ替わります。KEYRINGの速報で扱った事案のうち、配送の情報が関わったものを挙げます。

図表9配送の情報が関わった最近の事案(KEYRINGの速報から)
公表組織内容
2025年11月クーパン(韓国)会社は3,370万アカウントの氏名、電話番号、メールアドレス、配送先住所、注文情報の流出を発表。韓国の個人情報保護委員会は約3,750万人と認定した(No.0040)
2026年8月CEVA Logistics(CMA CGMグループ)欧州の契約物流の拠点に侵入があり、配送を任せていた小売などが、自社の顧客の配送情報が盗まれたと利用者に知らせた(No.0067)
2026年8月楽天ブックスネットワーク配送業務に使ったPC端末に不正アクセス。端末に残っていた通販利用客33,333件の情報が対象になった(No.0088)
2026年10月パタオ(バングラデシュ)サイバー攻撃を受け、会社は利用者の氏名や連絡先を外部の者が見たと認めた(No.0230)

出典:KEYRING 情報管理速報の各記事と、そこに載せた出典。原因別の一覧は不正アクセスによる情報漏えい事故の一覧と委託先で起きた情報漏えい事故の一覧

CEVAの事案は、配送を委託した側の企業が、委託先で起きた流出を自社の顧客に知らせた例です。佐川急便の事案でも、荷物を出した通販事業者などが、同じ立場に置かれています。

9個人情報保護委員会への報告と出荷人の手続き

個人情報保護法は、一定の漏えい等が起きたとき、事業者に個人情報保護委員会への報告と本人への通知を義務付けています。報告が必要なのは、要配慮個人情報が含まれる場合、財産的被害のおそれがある場合、不正の目的をもって行われたおそれがある行為による場合、本人の数が1,000人を超える場合などです。不正アクセスは3つめにあたり、今回は件数の面でも1,000人を超えるとみられます。

図表10漏えい等報告の期限と、佐川急便が示した連名の報告
9月30日 発覚 10月1日 速報(3〜5日以内) 発覚から30日以内 確報の期限 発覚から60日以内 不正の目的のおそれ 出荷人(荷主) 配送を委託した企業 送り状の個人情報を取得 佐川急便 報告内容を取りまとめ、 出荷人と連名で確報する方向 個人情報保護委員会 速報・確報を受理 連名に同意しない出荷人は、自ら速報・確報を行う必要が生じる場合がある

出典:個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」、同「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」、佐川急便 第4報・第5報・FAQ。期限の目盛りは等間隔ではない

ガイドライン(通則編)は、速報の「速やか」の目安を、事態を知った時点から概ね3〜5日以内としています。確報は30日以内、不正の目的によるおそれがある場合は60日以内で、事態を知った日を1日目として土日・祝日も含めて数えます。期限の時点で一部が分かっていなければ、その時点の内容を報告し、判明しだい追完します。本人への通知が難しい場合は、事案の公表などの代替措置が認められています。佐川急便が「本お知らせの公表をもって通知に代えさせていただきます」と書いたのは、この扱いにあたります。

出荷人の側では、佐川急便から報告対象の件数などの案内が届くのを待つことになります。佐川急便は、連名の報告は出荷人自身の個別の報告を妨げないとし、すでに個別に報告した出荷人も連名に切り替えられるとしています。

出荷人が自社の顧客に説明するときは、佐川急便の発表と同じ留保を保つことが求められます。対象は6月21日〜9月30日に佐川急便で届けた荷物の依頼主とお届け先であること、件数はのべ件数で、外部への流出を1件ずつ確かめた数ではないこと、カード情報とパスワードは含まれないこと、品名と配送履歴は確認中であることです。自社の判断で「流出した」「流出していない」と言い切ると、佐川急便の続報と食い違うおそれがあります。

10影響の範囲にかかわる4つの事実

1不正アクセスが確認されたシステムに、3種類の情報があった

侵入の経路は公表されていません。公表されているのは、このサービス(インターネット貨物システム)で不正アクセスが確認され、約100日分の送り状データ、契約者情報、会員情報の3種類が流出した可能性があることまでです(第4報・第5報)。

2送り状1枚ごとに、2人分の情報が記録される

送り状には、依頼主とお届け先の両方の氏名・住所・電話番号が書かれます。通販で受け取っただけの人も対象になり、利用した覚えのない人まで範囲が広がります。のべ件数が大きくなるのは、この記録の仕方によります。

3件数の公表まで、発覚から23日だった

名寄せを進めている段階で、件数の公表は発覚から23日後になりました(第4報・第5報)。10月26日時点でも実人数は示されていません。FAQは、自分が対象かを確認する方法について、対象の特定・範囲の確認を進めており、確認ができ次第順次案内するとしています。

4お荷物問い合わせのほか、Web受付やAPIも止まった

佐川急便は10月1日、お荷物問い合わせ、API、宅配便のWeb受付、受取先変更、商品回収などのWebサービスを止めたと発表し(第2報)、同じ日の正午にインターネット貨物システムへの外部からのアクセスを遮断しました(第4報)。第5報は、被害の拡大を防ぐため、外部からのアクセスを遮断し、一部のWebサービスを停止していたと説明しています。このうち8つは10月23日時点でも止まっています(第5報)。

この整理は、公開された情報をもとにKEYRING編集部が行ったものです。侵入の経路が公表されれば、見直します。

11利用者と企業が取るべき対応

佐川急便が利用者に求めているのは、同社を装う連絡への注意です。流出したおそれのある情報にパスワードとカード情報は含まれないため、まず警戒すべきは、氏名や住所を知ったうえで届く偽の連絡です。

図表11利用者が確かめる順番
  1. いますぐSMSやメールのリンクを開かない

    佐川急便は、荷物の集配についてSMSで案内していないとしている。不在通知や住所確認をうたう連絡が来ても、記載のURLを開かず、個人情報を入れない。氏名や住所が正しく書かれていても、本物の証拠にはならない。

  2. いますぐ配送状況は公式サイトかLINEで調べる

    確認したい荷物があれば、自分で佐川急便の公式サイトを開き、送り状の番号で調べる。不安があれば最寄りの営業所に問い合わせる。LINEからの問い合わせでも配送状況を確かめられる(第4報)。

  3. 今週中スマートクラブのパスワードを見直す

    スマートクラブのパスワードは流出の対象外だが、ほかのサービスと同じIDとパスワードを使っている人には、佐川急便は変更を勧めている。マイページの2段階認証の連絡先(メールアドレスなど)が、今も使えるものかを確かめる。

  4. 続けて身に覚えのない荷物や請求に注意する

    佐川急便はFAQで、不審な連絡や請求、身に覚えのない荷物の送付があった場合は慎重に対応するよう求めている。

  5. 案内が来たら個別の案内の内容を、公式の窓口で確かめる

    佐川急便は対象者に順次案内するとしている。案内の真偽が分からなければ、専用コールセンター(0120-28-3449、午前9時〜午後5時、土日・祝日を含む)か、公式サイトの専用チャットで確かめる。

出典:佐川急便 第5報、FAQ、「佐川急便を装った迷惑メールにご注意ください」をもとにKEYRING編集部が作成

企業が確かめること

荷物を出す企業(出荷人)
  • 6月21日〜9月30日に佐川急便で出荷した件数と、顧客の範囲を出荷履歴から把握したか
  • 連名の報告に同意するか、自社で報告するかを決め、担当者を置いたか
  • 自社の顧客への説明と、問い合わせの窓口を用意したか
公開の照会サービスを持つ企業
  • 今回の経路とは関係なく、公開の照会画面を持つ企業に共通する点検として挙げる
  • 番号の入力だけで使える画面から、システムのどこまでつながっているかを図にしているか
  • 普段と違う量の照会や取り出しを、検知して止められるか
  • 保管するデータごとに、保管の理由と期間を書き出しているか
経営層
  • 委託先で起きた流出を、自社の報告義務として扱う手順があるか
  • 件数が確定しない段階で、何を、いつ公表するかを決めているか
  • 1つのシステムを止めたとき、どの業務が止まるかを把握しているか

12提言

今回の事案は、荷物の追跡という、誰もが毎日のように使う窓口の裏で起きました。この調査から、KEYRINGは次の4つを提言します。

1公開の窓口から届く範囲を、最小にする

照会に必要な項目だけを、照会に必要な期間だけ、窓口とつながる場所に置く。氏名・住所・電話番号を含むデータとは、経路を分けておく。今回の事案の経路とは関係なく、公開の窓口を持つ事業者に共通する備えとして挙げる。

2保管の理由と期間を、項目ごとに書き出しておく

今回は、システムの保管期間が送り状データの対象期間になった。自社でも、保管するデータの項目ごとに、保管の理由と期間を書き出しておく。

3名寄せの準備を、平時にしておく

流出が起きてから同じ人の記録を束ねると、件数の公表と本人への通知が遅れる。誰の情報を何件持っているかを、平時から数えられるようにしておく。

4委託元と委託先で、報告の段取りを決めておく

配送のように多くの荷主の情報を預かる事業では、流出時の連名の報告、件数の受け渡し、顧客への説明の分担を、契約の段階で決めておく。

提言は、公開された情報をもとにKEYRING編集部が考えたものです。

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用語集

送り状
荷物に貼る伝票。依頼主とお届け先の氏名・住所・電話番号、問い合わせ用の番号などが書かれる
名寄せ
表記の違う記録を同じ人のものとして束ね、重複を除く作業
のべ件数
同じ人が何度含まれても、その回数だけ数えた件数。実際の人数とは一致しない
出荷人
佐川急便に配送を委託している荷主。通販事業者などが含まれる
API
別のシステムから機能やデータを呼び出すための窓口。ここでは法人が配送状況を自社のシステムに取り込むために使う
漏えい等報告
個人情報保護法にもとづき、一定の漏えい等が起きたときに事業者が個人情報保護委員会に行う報告。速報と確報がある
スミッシング
SMSで偽のサイトに誘い、個人情報やパスワードを入力させる手口
2段階認証
パスワードに加えて、ワンタイムパスワードなど別の確認を行うログインの方式

参考文献

このレポートは2026年10月26日時点の公開情報にもとづきます。佐川急便の調査は続いており、件数、対象者、侵入の経路は今後の発表で変わる可能性があります。新しい情報があれば更新します。最終閲覧日はいずれも2026年10月26日です。