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情報漏えい原因調査レポート No.011

不正アクセスによる「ふるさとチョイス」会員情報445万件の流出で、何が分かり、何が分かっていないのか

ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」で、会員の氏名・住所・電話番号・メールアドレス、ハッシュ化されたパスワード、寄附控除試算額が外部に流出した。運営するトラストバンクは、不正アクセスから2日後に異常に気づき、サービスを止めた。何が流出し、寄附を受ける全国の自治体に何が起きたのかを、公開情報で追う。

2026年10月26日 公開KEYRING編集部2026年10月26日時点の公開情報にもとづく読了の目安 約25分
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株式会社トラストバンクtrustbank.co.jp

数字で見る今回の事案

出典は各数字の下に記載
外部流出を確認した会員情報
4,454,097件

氏名、メールアドレス、住所、電話番号、ハッシュ化されたパスワード、寄附控除試算額。今後の調査で変わる可能性がある(トラストバンク 10月20日)

追加の項目まで流出した寄附者
5名

ポイント履歴(5名)、寄附履歴・生年月日・クレジットカードの下4桁・名義・有効期限(各2名)など(トラストバンク 第2報 10月23日)

不正アクセスから異常に気づくまで
2日

10月17日(土)に不正アクセス、19日(月)に通常と異なるアクセス傾向を把握。日数は編集部が数えた

ふるさとチョイスと契約する自治体
1,700超

2024年10月時点。掲載する返礼品は98万点以上(2026年5月時点、ITmedia NEWS)。朝日新聞は76万点超としている

同じ年の4月に不正ログインされたアカウント
2,688件

4月14日〜15日。リスト型攻撃の可能性が高いとした(トラストバンク 4月24日)

ふるさと納税の受入額(令和7年度)
1.33兆円

約1兆3,314億円、約5,963万件。仲介サイトの停止は、この寄附の窓口の一つが止まることを意味する(総務省)

エグゼクティブ
サマリー

  1. 会員情報は「漏えいのおそれ」ではなく、外部への流出が確認された。トラストバンクは10月20日、会員情報445万4097件が外部に流出したことが判明したと発表した。件数と項目は、今後の調査で変わる可能性があるとしている。
  2. 侵入の経路は公表されていない。発表は「今回の不正アクセスによって検知した脆弱性」の詳細な調査を進めるとし、何らかの脆弱性があったことを示している。どのシステムの、どの種類の脆弱性かは、10月26日時点で明らかにされていない。
  3. 流出の中に、寄附控除試算額が含まれていた。自己負担が2,000円に収まる寄附の上限額を、利用者がサイトで試算した値である。上限額は収入や家族構成で決まるため、氏名・住所と結び付いた形で外に出た。
  4. 同じ年に、性質の違う3つの事案が続いた。4月にはリスト型攻撃とみられる不正ログイン(2,688件)、10月5日にはAmazon Payを使った手続きで別の利用者の申込情報が閲覧可能な状態になった不具合(254件)を公表していた。前の2件の原因は互いに異なり、今回の事案との関係は公表されていない。
  5. 寄附を受ける側の自治体も、受付の窓口を失った。サイト、アプリ、ガバメントクラウドファンディングが止まり、提携する他社のふるさと納税サイトでも、ふるさとチョイスとデータ連携する自治体・返礼品の受付が止まり、各地の自治体が他の仲介サイトや注意喚起を案内した。10月26日時点で、再開の時期は発表されていない。

1はじめに

2026年10月20日、株式会社トラストバンクは、運営するふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」で第三者による不正アクセスがあり、会員登録している寄附者の個人情報445万4097件が外部に流出したと発表しました。前日の19日15時50分から、ふるさとチョイスの関連サービスは止まっています。

ふるさとチョイスは、全国の自治体の返礼品を探して寄附を申し込める仲介サイトです。ITmedia NEWSによると、契約する自治体は1,700を超え(2024年10月時点)、掲載する返礼品は98万点以上にのぼります(2026年5月時点)。寄附者が氏名や住所を預けている先は、寄附先の自治体ではなく、このサイトを運営する民間企業です。

KEYRINGの速報(No.0264)では第1報の内容を伝えました。このレポートでは、10月23日の第2報、同じ年に公表された2つの事案、寄附を受ける自治体の告知、個人情報保護委員会の制度をあわせて読み、次の問いに答えます。

  • 何が、いつ、どの順番で起きたのか
  • 流出した情報には、どんな重さがあるのか
  • 侵入の経路について、何が公表され、何が公表されていないのか
  • 寄附を受ける自治体や、提携する他のサイトに何が起きたのか
  • 寄附者と、個人情報を預かる企業は、いま何を確かめればよいのか
調査の方法と範囲

2026年10月26日までに公開された情報を対象にしました。トラストバンクの発表(10月19日、20日、23日、および4月24日、10月5日)を第一の根拠とし、自治体の告知、総務省・個人情報保護委員会・警察庁などの公的資料、報道で補っています。数値は出典の値をそのまま使い、編集部が数えた値はその旨を記しています。侵入の経路など、当事者が公表していないことは「公表されていない」と書き、推測では埋めていません。

2発覚から公表までの経緯

不正アクセスは10月17日の土曜日に起きました。トラストバンクが通常と異なるアクセスの傾向に気づいたのは、週明けの19日です。同じ日の午後にサービスを止め、翌20日に流出を公表し、個人情報保護委員会への報告を終えています。第2報は3日後の23日でした。

図表12026年の経緯
  1. 4月14日〜15日
    2,688件のアカウントに不正ログイン

    4月14日10時43分ごろから15日8時19分ごろまで。何らかの経路で第三者に取得された認証情報を使ったログインの試み(リスト型攻撃)の可能性が高いとした。4月24日に公表。

    出典:トラストバンク(4月24日)
  2. 9月7日〜8日
    Amazon Payでの寄附受付を止める

    9月7日18時22分から8日14時03分まで。Amazon Payの認証のあと、別の利用者の申込情報が画面に出る可能性がある不具合を修正した。10月5日に公表。

    出典:トラストバンク(10月5日)
  3. 10月17日(土)
    第三者による不正アクセス

    ふるさとチョイスの会員情報に対して不正アクセスが行われた。時刻と侵入の経路は公表されていない。

    出典:トラストバンク(10月20日)
  4. 10月19日(月)
    通常と異なるアクセスの傾向を把握

    確認したところ、17日の不正アクセスと、会員情報の外部への流出が分かった。日本経済新聞と日本テレビは、検知を19日の午前と伝えている。

    出典:トラストバンク(10月20日)、日本経済新聞、日本テレビ
  5. 10月19日 15:50
    関連サービスを停止

    「被害拡大の防止および安全確保を最優先に」関連サービスを一時停止。同日の告知は「不正アクセスの疑いがある事象を検知」とし、流出には触れていない。

    出典:トラストバンク(10月19日)
  6. 10月19日
    提携サイトでも寄附の受付が止まる

    JR東日本の「JRE MALLふるさと納税」が、ふるさとチョイスとデータ連携する一部の自治体の返礼品について、寄附の受付を休止した。

    出典:JRE MALLふるさと納税、ITmedia NEWS
  7. 10月20日(火)
    会員情報445万4097件の流出を公表

    個人情報保護委員会への報告を完了したと発表。21日に所轄の警察署へ被害を申告する予定とした。同じメールアドレスとパスワードを他のサービスで使っている会員に、そちらの変更を求めた。

    出典:トラストバンク(10月20日)
  8. 10月21日(水)〜
    会員へ個別にメールを送る

    流出の有無と、流出が確認された項目を、会員に順次メールで知らせ始めた。各地の自治体も告知を掲載した。

    出典:トラストバンク 第2報、御殿場市
  9. 10月23日(金)
    第2報:5名で追加の項目の流出が判明

    ポイント履歴、寄附履歴、クレジットカードの下4桁・名義・有効期限、生年月日、送付先などが流出していた。5名には個別に連絡したとしている。

    出典:トラストバンク(10月23日)

不正アクセスから異常の把握までは2日、把握から公表までは1日でした。

第2報の5名は、第1報の445万4097件に含まれる会員です。件数が増えたのではなく、一部の会員について、流出した項目が増えました。調査が進むと、同じ人の情報でも、どこまで外に出たかの見え方が変わることを示しています。

19日の告知は「不正アクセスの疑い」にとどまり、流出を伝えたのは翌20日です。第2報の公表までに会員へのメールを始めており、会員は自分の情報が含まれるかを、メールで確かめられる形になりました。

3流出した情報と、その重さ

第1報で流出が確認されたのは6つの項目です。第2報では、5名について、ほかの項目も流出していたことが分かりました。

図表2流出が確認された情報(10月23日時点)
範囲項目件数
会員情報(第1報)氏名、メールアドレス、住所、電話番号、ハッシュ化されたパスワード、寄附控除試算額4,454,097件
追加の項目(第2報)ポイント履歴5名
追加の項目(第2報)寄附履歴2名
追加の項目(第2報)クレジットカード情報(下4桁、名義、有効期限)2名
追加の項目(第2報)生年月日2名
追加の項目(第2報)送付先(1名)。ほかに「住所の一部削除(県名)」(1名)。第2報の表記のままで、具体的な内容の説明はない各1名

出典:トラストバンク「不正アクセスによる寄附者様情報の外部流出に関するお詫びとお知らせ」(10月20日)、同(第2報、10月23日)。追加の項目は対象者が重複しており、合計5名。会員情報の件数と項目は、今後の調査で変わる可能性がある

カードの情報は、表示のたびに決済代行会社から取っていた

第2報によると、マイページで保存済みのカードを表示するとき、カードの下4桁・名義・有効期限は、その都度、決済代行会社から取得して表示する仕組みでした。トラストバンクのシステムにはこれらを保存していません。2名については、このカード情報の表示ページに第三者がアクセスしていたことが確認されました。トラストバンクは、この情報だけでカード決済はできないとしています。

この記述からは、会員情報が外部に流出したことに加えて、少なくとも2名については、会員のマイページの画面にも入っていたことが分かります。どうやってマイページに入ったのかは公表されていません。

個人情報保護委員会は、報告が必要な事態の例として「クレジットカード番号を含む個人データ」の漏えいを挙げる一方、カード番号の下4桁と有効期限の組み合わせだけであれば、それだけで直ちに財産的被害のおそれがある事態には当たらないとしています。今回は、それとは別に、1,000人を超える本人の数という点で報告の対象に当たり、第三者の不正アクセスという点でも当たるとみられます(第9章)。

ハッシュ化されたパスワードは、変えなくてよいわけではない

パスワードはハッシュ化された形で保存されていました。ハッシュ化は、元のパスワードに戻せないように変換して保存する方法です。ただし、どの方式でハッシュ化していたか、パスワードごとに別の値(ソルト)を混ぜていたかは公表されていません。短いパスワードやよく使われるパスワードは、手元で総当たりに計算して突き合わせることで、元の値が割り出される場合があります。

トラストバンクが、ふるさとチョイスではなく「他のサービス」のパスワードの変更を求めているのは、このためと考えられます。ふるさとチョイスそのものは止まっており、再開の前にパスワードの扱いがどうなるかは発表されていません。4月の不正ログインは、他で漏れた認証情報を使うリスト型攻撃が疑われていました。今回流出したメールアドレスとパスワードの組み合わせが割り出されれば、同じ組み合わせを使っている他のサービスが、次の入口になります。

寄附控除試算額は、収入の目安になる

寄附控除試算額は、利用者がサイトで計算した、自己負担が2,000円に収まる寄附の上限額です(朝日新聞)。上限額は、その年の収入や家族構成によって決まります。試算額が氏名・住所・電話番号と結び付いて外に出たことで、受け取った側は、その人のおおよその収入の水準を推し量れます。

収入の見当がつく名簿は、投資や副業をかたる勧誘、税の還付をかたるメールや電話に使われるおそれがあります(編集部の見立て)。トラストバンクも、同社や関係先を装ったメール・SMS・電話・郵便物への注意を呼びかけています。寄附控除試算額は、個人情報保護法の「要配慮個人情報」には当たりません。法令上の区分が重くなくても、寄附者にとっての重さは別にあります。

寄附履歴が流出した2名については、どの自治体にいくら寄附したかが外に出ました。寄附先は、出身地や支援したい地域、好みの返礼品を映します。件数は2名ですが、ふるさと納税サイトが預かる情報の中で、本人の暮らしに近い情報です。

41つのサイトが止まると何が止まるか

ふるさとチョイスは、寄附者と自治体の間に立つ仕組みです。寄附者はサイトで返礼品を選び、会員情報と支払いの情報を入力します。申込の情報は、寄附先の自治体と、返礼品を送る事業者に渡ります。会員情報を預かり、守るのは、サイトを運営するトラストバンクです。

図表3寄附者の情報がどこにあったか
寄附者 会員登録・寄附の申込 ふるさとチョイス 運営:トラストバンク 会員情報 4,454,097件 氏名・住所・電話・メール・ハッシュ化パスワード 寄附控除試算額 寄附先の自治体 1,700超と契約 返礼品の事業者 配送先などを受け取る 提携する他社のサイト データ連携で返礼品を掲載 連携 第三者 侵入の経路は公表されていない 10月17日に不正アクセスし、外部へ流出

トラストバンクの発表(10月19日、20日、23日)、ITmedia NEWS、JRE MALLふるさと納税、有田町の告知をもとにKEYRING編集部が作成。第三者がどの部分から入ったかは公表されていない

トラストバンクが止めたのは、ふるさとチョイスのサイトだけではありません。佐賀県有田町の告知は、停止中のサービスとして、次のものを挙げています。

図表4停止したサイトとアプリ(自治体の告知による)
区分サービス
トラストバンクのサービスふるさとチョイス、ふるさとチョイスGCF(ガバメントクラウドファンディング)、ふるさとチョイスアプリ、チョイスPayアプリ
提携しているサイトJRE MALLふるさと納税、セゾンのふるさと納税、ふるラボ、まいふる by AEON CARD、KABU&ふるさと納税、Vふるさと納税、ふるさと納税デパート、マルイふるさと納税、ケアネットふるさと納税

出典:有田町「ふるさと納税ポータルサイト『ふるさとチョイス』における不正アクセス検知に伴うサービス停止及び注意喚起について」(2026年10月20日更新)。提携サイトの停止は、ふるさとチョイスとデータ連携している自治体・返礼品に限られる場合がある。JRE MALLふるさと納税は、連携していない自治体の返礼品は通常どおり受け付けるとした。サイト名は各サービスの公式の表記に合わせた

名前の違うサイトが同時に止まったのは、それらが返礼品の情報をふるさとチョイスから受け取っていたためです。JRE MALLふるさと納税は、自らが不正アクセスを受けたのではないと説明しています。寄附者から見れば別々の窓口でも、裏側では1つの仕組みにつながっていました。

5分かっていること、分かっていないこと

10月26日時点で、トラストバンクの発表は第2報までです。原因の中心にあたる侵入の経路は、まだ公表されていません。

図表5公式発表で確認できる範囲(10月26日時点)
項目公表されていること
侵入の経路公表されていない。「今回の不正アクセスによって検知した脆弱性の対応について」外部の専門家の協力のもと詳細調査を進めるとしている
脆弱性の種類公表されていない。どのシステム(サイト、アプリ、管理画面、外部の部品など)のものかも書かれていない
不正アクセスの時刻と期間「10月17日(土)」とだけ書かれている。それ以前から入られていたかは公表されていない
流出した件数と項目会員情報4,454,097件、6項目。第2報で5名の追加の項目。今後の調査で変わる可能性がある
パスワードのハッシュの方式公表されていない
クレジットカード番号トラストバンクのシステムには保存していない。表示用の下4桁・名義・有効期限は決済代行会社から都度取得する仕組み(第2報)
二次被害公式発表に、確認された二次被害の記載はない
当局への届け出10月20日に個人情報保護委員会へ報告。21日に所轄の警察署へ被害を申告する予定とした
サービスの再開未定。安全性の確認を踏まえて決めるとしている
4月・10月5日の事案との関係公表されていない

出典:トラストバンク(10月19日、20日、23日)。二次被害の有無は、公式発表に記載がないことを示すもので、被害がないことを意味しない

公表されている事実のうち、侵入の経路を考えるうえで手がかりになるのは2つです。1つは、トラストバンク自身が「検知した脆弱性」と書いていること。もう1つは、第2報で、少なくとも2名についてマイページのカード情報表示ページに第三者がアクセスしていたことです。会員データの持ち出しと、個別のマイページへのアクセスが、同じ手口によるものかどうかは分かりません。

ふるさとチョイスは、Amazon Payなどの外部の決済の仕組みや、カード情報を預かる決済代行会社とつながっています。10月5日に公表した不具合は、Amazon Payの認証のあとに申込情報を復元する処理で起きていました。今回の脆弱性が、こうした外部との連携部分にあったのか、会員データを扱う別の部分にあったのかは、公表された情報からは判断できません。

6同じ年に続いた3つの事案

ふるさとチョイスでは、2026年に入ってから、会員の情報にかかわる公表が3回ありました。4月と10月5日の2件は原因が公表されており、互いに異なります。10月20日の事案の原因は公表されていません。

図表62026年にトラストバンクが公表した3つの事案
公表日何が起きたか原因として公表されたこと規模
4月24日第三者による不正ログイン。マイページ(会員情報)や寄附履歴が閲覧された可能性何らかの経路で第三者に取得された認証情報を使ったログインの試み(リスト型攻撃)の可能性が高い2,688アカウント。対象時間帯の寄附は3件で、不正な決済は確認されていない
10月5日Amazon Payでの寄附手続きで、別の利用者が入力した申込情報が画面に表示される可能性があった(閲覧可能な状態になった申込データは254件)認証のあとに申込情報を復元する処理で、利用者を識別できない場合の確認が不十分だった254件(2025年11月13日〜2026年9月7日)。うち19件が申込画面、6件が決済手続きまで進んだが、いずれも本人のAmazonアカウントによるもの
10月20日第三者による不正アクセスで、会員情報が外部に流出公表されていない(検知した脆弱性を調査中)4,454,097件

出典:トラストバンク「ふるさとチョイスにおける不正ログインに関する状況報告とお願い」(4月24日)、「『ふるさとチョイス』における個人情報の漏えいに関するお詫びとお知らせ」(10月5日)、10月20日の発表

4月の事案は、他で漏れたIDとパスワードを使って、本物のログイン画面から入る手口が疑われました。トラストバンクは、ログイン機能へのアクセス制限や防御の追加、監視の強化を行い、会員にログイン認証コードの設定を勧めています。10月5日の事案は外部からの攻撃ではなく、自社のシステムの処理の不具合でした。認証・決済の処理の再点検、テストと監視の体制の強化を約束しています。

10月5日の不具合は、2025年11月13日から2026年9月7日まで、約10か月続いていました。別の利用者のブラウザ上で閲覧可能な状態となった申込データは254件で、漏えいした可能性がある情報は、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、お礼の品の配送先などです。トラストバンクは、不正な決済や、カード番号・セキュリティコードの漏えいはないとしています。外部からの攻撃でなくても、処理の誤りで個人情報が他人に見える状態は起こります。

10月20日の事案は、その公表から15日後に公表されました(日数は編集部が数えた)。前の2件は、ログイン画面への攻撃と、決済の処理の不具合でした。3件に共通しているのは、どれも会員の情報が集まる一つのサイトで起きたことです。前の2件の対策が今回の事案にどう関係したかは、発表に書かれていません。

7寄附を受ける自治体への影響

今回の事案で、寄附者の次に影響を受けたのは、ふるさとチョイスを寄附の窓口として使う自治体です。自治体は個人情報の流出の当事者ではありませんが、寄附者からの問い合わせを受け、寄附を受け付ける別の手段を案内しなければなりませんでした。

自治体が出した告知

図表7自治体の告知に見る対応の例
自治体告知の内容
福岡県流出の項目と件数を伝え、二次被害への注意を呼びかけた。停止中も、さとふると楽天ふるさと納税から寄附できると案内(10月21日更新)
北海道滝川市サイトとアプリ、連携パートナーサイトが止まり、ふるさとチョイスからの寄附は受け付けていないと告知。市への寄附者の情報が含まれるかは調査中とした(10月21日13時現在)
静岡県御殿場市10月21日にトラストバンクから会員へ流出の有無を知らせるメールが送られたと案内。メール本文のリンクを開かず、公式サイトで同じ内容を確かめるよう求めた
佐賀県有田町停止したトラストバンクのサービスと、提携する9つのサイトを列挙した(10月20日更新)

出典:各自治体のウェブサイト。ほかにも千代田区、神奈川県、須崎市、淡路市など多くの自治体が告知を掲載している

cokiによると、広島県福山市には19日午後4時ごろトラストバンクから連絡が入り、返礼品の掲載と寄附の受付が止まりました。同じ記事によると、東京都西東京市では、ふるさとチョイス本体に加えて、ガバメントクラウドファンディングと連携するパートナーサイトも停止の対象になりました。ガバメントクラウドファンディングは、自治体が使い道を示して寄附を募る仕組みで、返礼品目当ての寄附とは別の、地域の事業のための資金集めにも使われています。

告知の内容は、多くがトラストバンクの発表の写しと、不審な連絡への注意です。自治体が自ら調べられることは限られます。滝川市が書いたように、自分の市に寄附した人の情報が含まれるかどうかも、運営会社の調査を待つしかありません。自治体と運営会社の間で、事故の際に誰が何を寄附者に伝えるかを、あらかじめ決めておく必要があることが分かります。

年末を控えた停止

停止の時期も影響を大きくしています。ふるさと納税は年末に寄附が集まります。その年の分の控除を受けるには、原則として12月31日までに寄附の決済を終える必要があり、会社員は年末に年収の見通しが立ってから上限額を確かめて寄附する人が多いためです(coki)。経済産業研究所(RIETI)の小西葉子上席研究員(特任)のコラムによると、2024年に寄附した人の50.6%が12月に寄附していました。2025年は、10月1日施行のポイント付与を伴う寄附募集の禁止を前に9月の寄附(41.1%)が12月(29.1%)を上回りましたが、12月も3割近くを占めています。

図表8ふるさと納税の利用者のうち、12月に寄附した人の割合

出典:経済産業研究所 小西葉子「速報:2025年ふるさと納税 ― 返礼品の選択構造と制度改正の影響、利用継続意向」(2026年3月11日)。各年1〜12月に寄附した人(20〜64歳の有職者、個人年収300万円以上)へのウェブ調査で、2024年は10,882人、2025年は10,850人。棒の長さは2024年を100とした比

総務省によると、令和7年度のふるさと納税の受入額は約1兆3,314億円、件数は約5,963万件でした。仲介サイトは、この寄附を集める窓口の一つです。仲介サイトが止まれば、寄附者は別のサイトへ移ることができますが、自治体の側では、そのサイトにしか掲載していない返礼品の受付が止まり、返礼品を出す地域の事業者の受注にも響きます。cokiは、広島県福山市がふるさとチョイス以外のサイトで受付を続けた例を挙げ、複数の窓口を持つことが代替手段になったと伝えています。

自治体と仲介サイトの関係

寄附の申込情報は、寄附先の自治体にも渡ります。一方、サイトの会員登録の情報(パスワード、試算額など)を管理しているのは運営会社です。今回流出したのは「ふるさとチョイスの会員情報」と発表されており、自治体のシステムから流出したものではありません。

8同じ月に相次いだ会員情報の流出

2026年10月は、会員情報の大規模な流出の公表が続いた月でした。KEYRINGの記録から、10月に公表された主なものを挙げます。原因の種類はいずれも不正アクセスです。今回の事案との関係を示す情報はありません。

図表92026年10月に公表された、不正アクセスによる主な会員情報の流出

出典:KEYRING 情報管理速報(各行のリンク先に、当事者の発表などの出典を掲載)。件数の表記と留保は各社の発表による

原因の種類ごとの一覧は不正アクセスと認証情報の漏れのページにまとめています。会員のメールアドレスとハッシュ化されたパスワードが一度に大量に出回ると、リスト型攻撃の材料が増えます。ふるさとチョイス自身が4月にリスト型攻撃とみられる不正ログインを受けていたことを考えると、他社で流出した情報が、次に別のサイトへの攻撃に使われる循環が起きうると読めます。

9漏えい等報告と、企業に求められること

個人情報保護法は、一定の漏えい等が起きたとき、事業者に個人情報保護委員会への報告と、本人への通知を義務づけています。報告が必要になるのは、次の4つのいずれかに当たる場合です。

図表10報告が義務になる4つの事態と、今回の事案
事態今回の事案
1 要配慮個人情報が含まれる公表された項目に、要配慮個人情報(病歴など)は含まれていない
2 不正に利用されると財産的被害が生じるおそれがあるカード番号は保存していない。下4桁と有効期限の組み合わせだけなら、直ちにはこれに当たらないと委員会は示している
3 不正の目的をもって行われたおそれがある第三者による不正アクセス。この類型に当たるとみられる
4 本人の数が1,000人を超える4,454,097件

出典:個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」。「今回の事案」の列は、公表された事実を4つの事態に当てはめて編集部が整理したもの

報告は2段階です。発覚から速やかに(個人情報保護委員会の案内では3〜5日以内)速報を、30日以内(不正の目的で行われたおそれがある場合は60日以内)に確報を出します。トラストバンクは、異常を把握した翌日の10月20日に報告を終えたと公表しました。

図表11漏えい等報告の期限と、トラストバンクの対応
発覚日 10月19日に把握 10月20日 報告完了 3〜5日以内 速報 30日以内 確報 60日以内 確報(不正の目的のおそれがある場合)

出典:個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」、トラストバンク(10月20日)。横の長さは日数のおおよその比。報告完了は事業者の公表にもとづく

トラストバンクは、調査で判明した事実(流出した情報の項目と件数、再発防止策など)は、確定次第速やかに知らせるとしています。

本人への通知は、状況に応じて速やかに行うことが求められます。トラストバンクは21日から会員に個別のメールを送り、流出の有無と項目を知らせています。445万件規模の会員に、本物の通知をどう見分けてもらうかは、別の課題になります。流出を伝えるメールそのものを装ったフィッシングが届くおそれがあるため、御殿場市はメールのリンクを開かず、公式サイトで照合するよう呼びかけました。

情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威として「システムの脆弱性を悪用した攻撃」が4位に挙がっています。トラストバンクの発表は「検知した脆弱性」の調査を進めるとしています。どのシステムの、どの種類の脆弱性だったのかは、同じような仲介サイトを運営する事業者にとって、確報や最終報で確かめたい点です。

10影響が広がった3つの条件

1445万件の会員情報が、一か所にまとまっていた

仲介サイトは、全国の自治体への寄附を一つの会員登録で済ませられる便利さを売りにしています。その分、会員の情報は運営会社のもとに集まります。今回は、445万件の会員情報が外に出ました。

2収入の目安になる試算額が、名簿と同じ場所にあった

寄附控除試算額は、利用者の便利のために保存されていた値です。氏名・住所と同じ単位で外に出たことで、収入の見当がつく名簿になりました。

3提携する他社のサイトまで、同じ仕組みにつながっていた

データ連携していた9つのサイトでも、一部の返礼品の受付が止まりました。寄附者にも自治体にも、別の窓口に見えていたものが、同時に使えなくなりました。

条件の整理は、公開された情報をもとにKEYRING編集部が行ったもので、原因を特定したものではありません。侵入の経路が公表されれば、見直します。

11利用者と企業が取るべき対応

トラストバンクと自治体が求めている対応に、編集部が勧める対応を加えて並べます。編集部の勧めの部分は、そう明記しています。

図表12ふるさとチョイスの会員が確かめる順番
  1. まず同じパスワードを使っている他のサービスを変える

    ふるさとチョイスと同じメールアドレスとパスワードの組み合わせを使っているサービスがあれば、そちらのパスワードを変える(トラストバンクの依頼)。あわせて、サービスごとに別のパスワードにすることを編集部は勧める。

  2. まず届いたメールが本物かを、公式サイトで照合する

    トラストバンクは10月21日から会員に個別のメールを送っている。メール本文のリンクは開かず、トラストバンクのニュースルームなど公式の案内に同じ内容があるかを確かめる。

  3. あわせて同社や関係先を装う連絡に注意する

    トラストバンクは、同社や関係先を装ったメール・SMS・電話・郵便物に注意し、URLや添付ファイルを開かないよう求めている。編集部の見立てでは、税の還付や返礼品の再送をかたる連絡もありうる。寄附控除試算額や寄附履歴を知っているかのような連絡でも、それだけで本物とは限らない。

  4. あわせて寄附の予定は、寄附先の自治体の案内で確かめる

    すでに申し込んだ返礼品や、これからの寄附は、寄附先の自治体のウェブサイトが案内する受付の方法を確かめる。多くの自治体が他の仲介サイトを案内している。

  5. 再開のあとログイン認証コードを設定する

    トラストバンクは4月の事案のあと、ログイン認証コードの設定を勧めている。再開後にパスワードの変更やログイン認証コードの設定が案内された場合は、それに従う。

出典:トラストバンク(4月24日、10月20日、23日)、福岡県、御殿場市の告知をもとにKEYRING編集部が作成

個人情報を預かる企業と自治体が確かめること

会員情報を預かる事業者
  • 試算結果や履歴など、会員の便利のために保存している値を、本当に保存し続ける必要があるか
  • パスワードのハッシュに、ソルトと計算に時間のかかる方式を使っているか
  • 通常と異なるアクセスを検知したとき、サービスを止める判断を誰がするかを決めているか
連携先・自治体
  • 仲介サイトが止まったとき、寄附者に案内する別の受付方法を決めているか
  • 事故のときに、運営会社と自治体のどちらが何を寄附者に伝えるかを取り決めているか
  • データ連携先の事故で、自分の窓口のどの部分が止まるかを把握しているか
経営層
  • 同じ年に起きた別の事案の教訓を、システム全体の点検につなげているか
  • 脆弱性の情報を受けてから修正までの期限を決め、守られているかを見ているか
  • 流出を伝える本物の通知を、利用者が見分けられる方法を用意しているか

12提言

今回の事案では、全国の自治体への寄附を一つにまとめる便利さが、そのまま会員情報の集中と、受付の窓口の集中になっていました。この調査から、KEYRINGは次の4つを提言します。

1保存しておく必要のない値は、保存しない

試算の結果や表示用の情報は、使い終わったら消す、または会員情報と分けて持つ。持っていない情報は流出しない。

2パスワードの流出を前提に、会員を守る

ハッシュの方式を強くし、ログインに追加の確認を求める。流出が分かったら、再開の前にパスワードを作り直してもらう。

3止まったときの窓口を、平時に決めておく

自治体は複数の受付手段を持ち、仲介サイトが止まった日に寄附者へ出す案内文を用意しておく。

4侵入の経路を、同じ業界に共有する

仲介サイトは似た仕組みで動いている。確報や最終報で脆弱性の種類と修正の経緯を示せば、他の事業者の点検に役立つ。

提言は、公開された情報をもとにKEYRING編集部が考えたものです。

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用語集

ふるさと納税
自分で選んだ自治体に寄附すると、自己負担の2,000円を除いた額が、所得税や住民税から控除される仕組み
寄附控除試算額
自己負担が2,000円に収まる寄附の上限額を、収入などから試算した値
仲介サイト(ポータルサイト)
多くの自治体の返礼品を一覧にし、寄附の申込と支払いを受け付けるサイト
ハッシュ化
元に戻せないように変換して保存する方法。短いパスワードは計算で割り出される場合がある
ソルト
ハッシュ化の前にパスワードごとに混ぜる別の値。同じパスワードでも違うハッシュになる
リスト型攻撃
他のサービスから漏れたIDとパスワードの組み合わせを使って、ログインを試す手口
漏えい等報告
一定の漏えい等が起きたときに、事業者が個人情報保護委員会へ行う報告。速報と確報の2段階
ガバメントクラウドファンディング
自治体が使い道を示して寄附を募る、ふるさと納税の仕組み。ふるさとチョイスではGCFと呼ぶ

参考文献

このレポートは2026年10月26日時点の公開情報にもとづきます。トラストバンクの調査は続いており、侵入の経路や流出の範囲は今後の発表で変わる可能性があります。新しい情報があれば更新します。最終閲覧日はいずれも2026年10月26日です。