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情報漏えい原因調査レポート No.014

公式SNSアカウントの乗っ取り、2026年に公表された15件で何が分かり、何が分かっていないのか

2026年に入ってから、企業や自治体、団体が、公式のSNSアカウントを第三者に乗っ取られたとウェブサイトで知らせる例が続いている。X、Instagram、Facebook、LINE、WhatsAppの15件の公表文を読み、何が起き、何が書かれ、何が書かれていないのかを数えた。原因や侵入の経路に触れたのは2件、公表時点でアカウントを取り戻していたのは1件だった。

2026年10月30日 公開KEYRING編集部2026年10月29日時点の公開情報にもとづく読了の目安 約20分

数字で見る2026年の公表

15件の公表文をKEYRING編集部が数えたもの
公式SNSの乗っ取りの公表
15件

2026年1月から10月29日まで。当事者のウェブサイトで公表文を確かめられたもの

原因・侵入の経路に触れた
2件

長野県と桑原商店。残る13件は調査中か記載なし

利用者のお金の被害
198,000円

長野県の1件。相談員を装ったメッセージに従い、利用者1名が振り込んだ(長野県の発表)

公表時点で取り戻していた
1件

明星食品。判明から復旧まで42日(日付の差を編集部が数えたもの)

新しいアカウントへ移った
3件

南知多町観光協会、シーホワン、sumile TOKYO

Meta社から返答がないとした
2件

古河市と尼崎市。どちらもFacebookページ

エグゼクティブ
サマリー

  1. 15件の内訳は、Xが5件、Instagramが5件、Facebookが3件、LINEとWhatsAppが1件ずつ。公表したのは、企業と店舗が9件、自治体が3件、団体が3件だった。企業と店舗の業種は、食品、酒販、出版、アパレル、自動車販売、飲食店、ITに分かれ、特定の業種に偏っていない。
  2. 原因や侵入の経路に触れたのは2件だけだった。長野県は、相談員がWhatsAppを装ったセキュリティ更新の案内に従って端末を操作したと書いた。桑原商店は、二段階認証を導入していなかったことを不手際として書いたが、侵入の経路は書いていない。残る13件は「調査中」か、原因に触れていない。
  3. 利用者のお金の被害を公表したのは長野県の1件で、198,000円だった。相談員になりすましたメッセージで振込を求められた利用者1名が、ATMから振り込んだ。個人情報が閲覧されたおそれを公表したのも長野県だけだった。ほかに、明星食品は不正な投稿やDMが確認されていないとし、古河市は直接的な被害の報告が届いていないとした。長野県は、上の被害を除き52名に被害がないことを確認し、残りの3名は確認中とした。
  4. 最新の公表文の時点でアカウントを取り戻していたのは、明星食品の1件だった。判明から42日後に復旧した。南知多町観光協会も一度は復旧したが、その後に永久停止となった。新しいアカウントに移ったのが3件、Xの運用をやめたのが1件、アカウントの利用を止めたのが1件。古河市と尼崎市は、Meta社に連絡しても返答がないと書いた。桑原商店は、X社からこれ以上のサポートはできないと連絡を受けた。
  5. 公表文の中心は、フォローしている人への注意だった。多くの公表文が、不審なDMやリンクを開かないよう呼びかけていた。一方、気づいた時期や経緯に触れたのは4件にとどまる。

1はじめに

2026年10月27日、株式会社アーバンリサーチは、公式Xアカウント「@URBAN_RESEARCH」が第三者に乗っ取られたと公式サイトで知らせました。不審な投稿やDM(ダイレクトメッセージ)、外部サイトへの誘導リンクが送られる可能性があるとして、開かないよう呼びかけています。

公式のSNSアカウントの乗っ取りは、会員のデータベースが侵入される事案と比べて、件数の大きな数字が出にくい事案です。ただ、乗っ取られたアカウントは、それまで組織の名前で発信してきたアカウントそのものです。フォローしている人には、組織からの連絡と見分けにくい投稿やメッセージが届きます。

KEYRINGは、2026年1月から10月29日までに、企業・自治体・団体が自ら公表した乗っ取りの事例を集め、公表文を読み比べました。このレポートでは、15件の公表文から次の問いに答えます。

  • どのSNSで、どんな組織が乗っ取りを公表したのか
  • 乗っ取られたアカウントから、何が送られたのか。利用者に被害は出たのか
  • 原因と侵入の経路について、何が公表され、何が公表されていないのか
  • アカウントは取り戻せたのか。取り戻せなかったとき、組織はどうしたのか
  • SNSを運用する組織と、フォローしている人は、何を確かめればよいのか
調査の方法と範囲

対象は、2026年1月1日から10月29日までに、日本の企業・自治体・団体・店舗が、自らのウェブサイト(関係する団体のサイトを含む)で公表した、公式のSNSアカウントの乗っ取りまたは不正なログインです。報道やまとめサイトは公表文を探す手がかりにだけ使い、KEYRING編集部が公表文の原文を開いて確かめた15件を数えました。役員個人のアカウントの件(2件)と、公表文を開けなかった件(3件)は数えていません。そのため、15件は2026年に起きた乗っ取りのすべてではなく、公表文の書き方の傾向を見るための材料です。数えた値は編集部によるもので、公表文に書かれていないことは「書かれていない」として扱い、推測では埋めていません。一般的な手口に触れる箇所は、個々の事例に当てはまるかどうかは分からないことを明記しています。

22026年に公表された15件

15件を公表日の順に並べました。「公表時点の状況」は、続報がある場合は最新の公表文によります。

図表1公式SNSアカウントの乗っ取りの公表(2026年1月〜10月29日)
公表日組織SNS公表された内容公表時点の状況
2月3日2月28日 続報株式会社桑原商店X身に覚えのない投稿またはDMが送られた。アカウント名が「日本株の急騰情報ステーション」に変えられたX社から、これ以上のサポートはできないと連絡を受けた。当面Xの運用を行わない
3月5日一般社団法人農協協会Instagram乗っ取りが判明。無関係な投稿やメッセージが送られる可能性を告知運営に報告し、復旧に向けて対応中。顧問弁護士・関係当局と相談
3月11日4月22日 続報明星食品株式会社Instagram管理の権限を失い、操作できなくなった。続報で、期間中に無関係な投稿や不正なDMは確認されていないとした4月22日に復旧
4月16日古河市(茨城県)Facebookページ投稿・変更・修正ができない。直接的な被害の報告は届いていないとしたMeta社に連絡しているが返答がなく、ページを止めることもできない
5月13日株式会社クロノスFacebook意図しない不正な投稿が行われた原因の究明と復旧に向けて対応中
5月13日(発生日)6月11日 追記南知多町観光協会(愛知県)Instagram(2アカウント)意図しない操作を確認。不審なDMや投稿が送られた可能性を告知一度は復旧したが不正アクセスが続き、Metaの審査で永久停止。関連のアカウントも停止され、6月11日に新しいアカウントで再開
6月29日株式会社本の雑誌社X乗っ取られた状態になった。自社の管理不足として詫びたX社に復旧を依頼中
7月22日横浜開港祭X「先日より」乗っ取られた状態を確認。開港祭を名乗る金銭や個人情報の要求に応じないよう呼びかけた復旧に向けて対応中
8月6日8月7日 追記シーホワン(飲食店、兵庫県宝塚市)Instagram店を装った投稿やメッセージが送られた可能性。追記で、投票を装い電話番号の入力を求めるメッセージが客に届いたと報告旧アカウントを削除し、新しいアカウントを開設
8月20日長野県WhatsApp(相談業務用)相談員を装ったメッセージで、利用者1名が198,000円を振り込んだ。登録者55名全員の氏名・電話番号・やり取りが閲覧されたおそれ8月13日にアカウントのセキュリティ対策を実施
8月27日尼崎市(兵庫県)中央地域課Facebookページ投稿・変更・修正ができない。課と関係のない投稿が1件確認されたMeta社に連絡しているが返答がない。ページは2025年2月から更新していなかった
9月1日株式会社ヤナセ(Audi 一宮)Instagram店舗のアカウントが操作できなくなった運営元に通報し、調査中(何を調べているかは書かれていない)
9月16日sumile TOKYO(DREAMS COME TRUE 公式サイトで告知)X不正アクセスが判明。投稿のURLやDMに注意を呼びかけたX社に通報し、復旧と原因の究明を進める。新しいアカウントで発信を続ける
10月9日CARBIC(中古車販売、埼玉県)LINE乗っ取られた可能性が浮上。不審なメッセージやリンクが送られるおそれを告知アカウントの利用を止め、当面は電話で受け付ける
10月27日株式会社アーバンリサーチX乗っ取りを確認。不審な投稿、DM、外部サイトへの誘導リンクが送られる可能性を告知事実関係を調査し、運営元に報告して対応中

出典:各組織の公表文(参考文献に一覧)。南知多町観光協会の公表文には掲載日がないため、発生日を記した。ヤナセの公表日は同社のお知らせの一覧に付いた日付による

このうち長野県の件は、KEYRINGの速報「長野県、相談用のメッセージアプリのアカウントが乗っ取られ、利用者1名が詐欺にあった」でも取り上げています。

3SNSの種類と、公表した組織

15件をSNSの種類で分けると、XとInstagramが5件ずつで、Facebookが3件でした。メッセージのアプリは、LINEとWhatsAppが1件ずつです。

図表2乗っ取りが公表されたSNSの種類

15件の公表文をもとにKEYRING編集部が数えたもの。南知多町観光協会はInstagramの2つのアカウントが対象だったが、1件として数えた

公表した組織は、企業と店舗が9件、自治体が3件(長野県、古河市、尼崎市)、団体が3件(農協協会、南知多町観光協会、横浜開港祭)でした。企業は、食品メーカー、酒販店、出版社、アパレル、輸入車と中古車の販売、飲食店、システム開発と、業種が分かれています。

Facebookの3件のうち2件は自治体のページでした。尼崎市のページは、2025年2月からInstagramに発信を移し、更新していなかったページです。発信をやめたあとも、ページそのものは残っていました。

図表3公表した組織の種類

15件の公表文をもとにKEYRING編集部が分類したもの。sumile TOKYOは公表文に業種の記載がないため、企業・店舗に含めた

4乗っ取られたアカウントから送られたもの

15件の公表文の多くは、「不審な投稿やDMが送られる可能性がある」という注意の形で書かれていて、実際に何が送られたかまでは書いていません。実際に起きたことを具体的に書いたのは、次の6件でした。

図表4乗っ取られたアカウントで実際に起きたと公表されたこと
起きたこと組織公表された内容
アカウント名の変更桑原商店(X)アカウント名が「日本株の急騰情報ステーション」に変えられた。同社のホームページのXのアイコンが、乗っ取られたアカウントにつながる状態になり、リンクを外す作業をした
無関係な投稿クロノス(Facebook)意図しない不正な投稿が行われた
無関係な投稿尼崎市(Facebookページ)課と関係のない投稿が1件確認された
電話番号を求めるメッセージシーホワン(Instagram)オンラインの料理番組のアンバサダー投票を装い、電話番号の入力を求めるメッセージが、早朝に客へ届いたと報告があった
振込を求めるメッセージ長野県(WhatsApp)相談員になりすましたメッセージで振込を求められ、利用者1名が198,000円を振り込んだ
送られていないと確認明星食品(Instagram)乗っ取られていた3月11日から4月22日までに、無関係な投稿や不正なDMが送られた事実は確認されていない

出典:各組織の公表文

ほかに横浜開港祭は、開港祭を名乗る人物からの金銭や個人情報の要求に応じないよう呼びかけました。南知多町観光協会は、キャンペーンの当選案内や、不審なサイトへの誘導を装うURL付きのメッセージに注意を促しています。どちらも、実際にそうしたメッセージが送られたかどうかは書いていません。

具体的に書かれた6件のうち、シーホワンと長野県の2件では、組織の名前を使って、電話番号の入力や振込を求めるメッセージが送られていました。乗っ取られたアカウントは、それまでのフォロワーと、組織の名前をそのまま使えます。受け取る側からは、組織からの連絡と見分けにくくなります。

5長野県:相談用のWhatsAppから詐欺の被害まで

15件のうち、利用者のお金の被害と、個人情報が閲覧されたおそれまで公表したのは長野県だけでした。対象は、外国人の県民からの生活の相談を受ける「長野県多文化共生相談センター」が、相談業務で使っていたWhatsAppのアカウントです。センターの運営は、長野県が公益財団法人長野県国際化協会(ANPI)に委託しています。

図表5長野県の事例の経緯
  1. 8月10日
    相談員が、偽の更新案内に従って端末を操作

    WhatsAppを装い、セキュリティの更新を求めるメッセージに従って、相談員が相談用の端末を操作した。

    出典:長野県(8月20日)
  2. 8月11日
    相談員を装ったメッセージが送られ、利用者1名が振り込む

    登録者55名のうち2名の氏名が閲覧され、相談員になりすましたメッセージが送られた。うち1名が振込を求めるメッセージに従い、ATMから198,000円を振り込んだ。

    出典:長野県(8月20日)
  3. 8月12日
    委託先から県へ報告。警察に相談し、登録者に注意を呼びかける

    被害を受けた人と県、ANPIが警察に相談した。

    出典:長野県(8月20日)
  4. 8月13日
    アカウントのセキュリティ対策を実施

    対策の中身は公表されていない。

    出典:長野県(8月20日)
  5. 8月14日
    登録者に、個人情報が漏えいしたおそれを通知

    全登録者の氏名、電話番号、相談員とのやり取りが閲覧されたおそれがある。

    出典:長野県(8月20日)
  6. 8月20日
    長野県が公表

    長野県は、上の被害を除き、全登録者のうち52名は不正利用や詐欺などの被害がないことを確認し、残りの3名は確認中とした(52名と3名で55名。被害を受けた1名がどちらに含まれるかは、発表からは読み取れない)。

    出典:長野県(8月20日)

この事例では、乗っ取りの入口は、アプリの運営会社を装った「更新」の案内でした。アカウントには、相談に来た人とのやり取りが残っていました。乗っ取った第三者は、そのやり取りと、相談員という立場を使って、振込を求めるメッセージを送ったことになります。相談のアカウントは、宣伝用のアカウントと比べて、フォローしている人との1対1のやり取りが多く残ります。

長野県は今後の対応として、相談員に情報セキュリティとSNSの利用についての研修を行うこと、ANPIの情報セキュリティの管理体制を点検し直すことを挙げました。15件のうち、再発防止策を具体的に書いたのは、長野県と、SNSの運用規程を改めるとした桑原商店の2件です。

6原因や侵入の経路に触れたのは2件

15件のうち、原因や侵入の経路に触れたのは2件でした。長野県は、相談員が偽のセキュリティ更新の案内に従って端末を操作したと書き、入口まで説明しています。桑原商店は続報で、二段階認証を導入していなかったことをセキュリティ上の不手際として書きました。ただ、どのように侵入されたかは書いていません。

図表6原因と侵入の経路の書き方

15件の公表文をもとにKEYRING編集部が数えたもの。本の雑誌社は自社の管理不足を詫びているが、原因の説明ではないため「記載なし」に含めた

残る13件のうち、クロノスとsumile TOKYOは、原因を調べていると書きました。アーバンリサーチは事実関係を調べていると書き、ヤナセは「調査中」と書きましたが、どちらも原因を調べるとは書いていません。そのほかは原因に触れていません。続報を出したのは、桑原商店、明星食品、南知多町観光協会、シーホワンの4件で、そのうち原因に触れた続報は桑原商店だけでした。

気づいた時期や経緯に触れたのは4件でした。明星食品(3月11日に判明)、南知多町観光協会(5月13日に意図しない操作を確認)、長野県(8月12日に委託先から報告)、横浜開港祭(「先日より」)です。

公式のSNSアカウントの乗っ取りの経路としては、一般に、運営会社や著名なブランドを装うメッセージで偽のログイン画面に誘う手口、ほかのサービスから漏れたパスワードを使う手口、連携しているアプリの権限を使う手口などが知られています。X社のヘルプセンターも、乗っ取られたときの対処として、パスワードの変更、登録したメールアドレスが安全かどうかの確認、連携しているアプリの解除を挙げています。ただ、15件のうち長野県を除く14件について、どの経路だったのかは公表されていません。

メールのアカウントの乗っ取りは、原因別の一覧「認証情報の漏れ」と「不正アクセス」でも読めます。たとえば日本大学の事例(No.0092)では、フィッシングで教職員のメールアカウントが乗っ取られたと公表されています。

7公表時点で取り戻していたのは1件

最新の公表文の時点でアカウントを取り戻していたのは、明星食品の1件でした。3月11日に判明し、Meta社に連絡したうえで、4月22日に復旧しています。判明から復旧まで42日でした。南知多町観光協会も一度は復旧しましたが、その後に永久停止となりました。

図表7公表時点のアカウントの状況

15件の最新の公表文をもとにKEYRING編集部が分類したもの。「運用・利用をやめた」は桑原商店(Xの運用を当面行わない)とCARBIC(LINEの利用を停止)。「対応中」には、セキュリティ対策を実施したとして復旧に触れていない長野県を含む。南知多町観光協会は一度復旧したのち永久停止となったため「新しいアカウントへ」に数えた

取り戻せなかった件では、組織はいくつかの道を選んでいます。

  • 新しいアカウントに移る。シーホワンは旧アカウントを削除して新しく作り直し、sumile TOKYOは新しいアカウントで発信を続けています。
  • 運営会社の判断で止まる。南知多町観光協会は、一度は取り戻したものの、その後も不正アクセスが続き、Metaの審査で2つのアカウントが永久に停止されました。関連する別のアカウントも止められ、約1か月後の6月11日に新しいアカウントで発信を再開しています。
  • 運用をやめる。桑原商店は、X社からプライバシーの規定によりこれ以上のサポートはできないと連絡を受け、新しいアカウントを勧められたものの、当面はXを運用しないと決めました。
  • 止めることもできない。古河市と尼崎市は、Meta社に連絡しても返答がないと書きました。古河市は、ページを止めることもできないとして、フォローの解除を呼びかけています。

乗っ取られたアカウントを組織の側で止められないあいだも、アカウントは組織の名前のまま残ります。このため、古河市、尼崎市、本の雑誌社などは、フォローを外すよう呼びかけました。取り戻すまでの期間は、組織の努力だけでは決まらず、各SNSの運営会社の対応にも左右されます。

8分かっていること、分かっていないこと

項目分かっていること分かっていないこと
件数2026年1月〜10月29日に、公表文を確かめられた件が15件公表されなかった乗っ取りの数。15件は起きた乗っ取りのすべてではない
原因長野県は偽のセキュリティ更新の案内と書いた。桑原商店は二段階認証の未導入を不手際とした(経路は書いていない)長野県を除く14件の侵入の経路
送られたものアカウント名の変更、無関係な投稿、電話番号や振込を求めるメッセージ(6件で具体的に公表。うち明星食品は送られていないと確認)9件で、実際に何が送られたか
利用者の被害長野県で1名が198,000円を振り込んだ。明星食品は不正な投稿やDMが確認されていないとし、古河市は被害の報告が届いていないとした12件で、利用者の被害があったかどうか
復旧公表時点で取り戻していたのは明星食品の1件(42日)。新しいアカウントへ移ったのが3件対応中とした7件の、その後の状況(2026年10月29日時点で続報なし)

15件の公表文をもとにKEYRING編集部が整理したもの

9SNSを運用する組織が確かめること

15件の公表文から、乗っ取りの前と後で組織が確かめておく項目を整理しました。原因が公表されていない件が多いため、どの対策で防げたかは分かりません。ここに挙げるのは、公表文に書かれた出来事をもとにした、KEYRING編集部の推奨です。

図表8公式SNSを運用する組織が確かめる順番
  1. まずすべての公式アカウントに、二段階認証を設定しているか

    桑原商店は、二段階認証を導入していなかったことを不手際として公表した。店舗、イベント、地域の課など、部署ごとのアカウントも含めて一覧にし、設定を確かめる。

  2. まずログインに使うメールアドレスと電話番号を、組織が管理しているか

    担当者の個人のアドレスや、退職した人の番号で登録していると、取り戻す手続きが進めにくくなる。X社のヘルプセンターも、乗っ取られたときに、登録したメールアドレスが安全かどうかを確かめるよう案内している。

  3. 次に使わなくなったアカウントやページを、残したままにしていないか

    尼崎市のFacebookページは、更新をやめたあとに乗っ取られた。発信をやめたアカウントは、消すか、ログインの設定を確かめたうえで残す。

  4. 次にアプリの運営会社を名乗る「更新」や「警告」の連絡で、ログインや操作をしない決まりがあるか

    長野県の事例の入口は、WhatsAppを装ったセキュリティ更新の案内だった。担当者が迷ったときに相談する先を決めておく。委託先が運用するアカウントも同じ決まりの範囲に入れる。

  5. 次に連携しているアプリや、管理の権限を持つ人を定期的に見直しているか

    予約投稿や分析のツール、代理店などに渡した権限が残っていないかを確かめる。X社のヘルプセンターは、乗っ取られたときの対処として、連携しているアプリの解除を挙げている。

  6. 備える乗っ取られたときに、どこで知らせるかを決めているか

    このレポートで数えた15件は、どれもウェブサイトで告知していた(ウェブサイトの公表文を調べる対象にしたため)。告知を載せるページと、公式サイトに置いたSNSへのリンクを外す手順を決めておく。桑原商店は、ホームページのアイコンが乗っ取られたアカウントにつながる状態になっていた。

出典:各組織の公表文、X ヘルプセンター「アカウントが乗っ取られた場合の対処」。項目はKEYRING編集部の推奨

担当ごとに確かめること

SNSの担当者
  • 自分が管理するアカウントすべてに二段階認証を設定しているか
  • 運営会社を名乗る連絡のリンクから、ログインしていないか
  • アカウントに残っているDMのやり取りに、個人の情報がどれだけあるか
情報システム・広報の責任者
  • 部署・店舗・イベントごとの公式アカウントを一覧にしているか
  • ログインのメールアドレスと電話番号を、組織が管理しているか
  • 乗っ取られたときの告知の文面と、載せるページを決めているか
委託先にSNSを任せる組織
  • 委託先が使う端末とアカウントの管理の決まりを、契約で確かめているか
  • 委託先で乗っ取りが起きたときに、すぐ報告を受ける流れがあるか
  • 相談や問い合わせに使うアカウントに、やり取りをどれだけ残すかを決めているか

10フォローしている人が確かめること

公表文の多くは、フォローしている人に、不審なDMやリンクを開かないよう求めていました。公表文で呼びかけられていたことを、具体的に挙げます。

  • 組織のアカウントから届いたDMでも、普段と違うURLや、電話番号・お金を求める内容なら開かない(桑原商店、横浜開港祭、シーホワンなど)
  • 届いたメッセージのリンクは押さず、メッセージを消す。必要ならSNSの運営に通報する(桑原商店、CARBIC)
  • 認証コードを求められても送らない(農協協会)
  • 乗っ取られたアカウントのフォローを外す(古河市、尼崎市、本の雑誌社、ヤナセ)
  • リンクを開いたり個人情報を入れたりした場合は、パスワードを変えるなどの対応を考える(明星食品)

組織からの連絡が本物かどうか迷ったときは、そのSNSではなく、組織の公式サイトのお知らせを確かめると、乗っ取りの告知が出ていないかが分かります(編集部の推奨)。

11提言

15件の公表文を読むと、乗っ取りが起きたことと、フォローしている人への注意は、多くの組織が書いていました。一方で、原因、実際に送られたもの、その後の状況まで書いた件は少数でした。組織が次に備えるために、4つを提言します。

1公式アカウントを一覧にし、二段階認証とログインの連絡先を確かめる

部署や店舗、イベントごとのアカウント、更新をやめたアカウントまで含めて一覧にする。それぞれに二段階認証が設定され、ログインのメールアドレスと電話番号を組織が管理しているかを確かめる。

2運営会社を名乗る連絡で操作しない決まりを、委託先まで広げる

「更新」「警告」「認証」を求める連絡では操作せず、決めた相談先に確かめる。委託先が運用するアカウントや端末も、同じ決まりの範囲に入れる。

3乗っ取られたときの告知の場所と文面を、先に決めておく

告知を載せるページ、公式サイトに置いたSNSへのリンクを外す手順、フォローしている人に求めることを決めておく。

4原因と、実際に送られたものを続報で知らせる

侵入の経路、送られた投稿やメッセージの内容、利用者の被害の有無、復旧したかどうかを、分かった範囲で続報にする。ほかの組織が同じ経路に備えられるようになる。

提言は、公開された情報をもとにKEYRING編集部が考えたものです。

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用語集

アカウントの乗っ取り
第三者が、本来の持ち主に代わってアカウントにログインし、操作できる状態になること。持ち主がログインできなくなることが多い
二段階認証
パスワードに加えて、確認コードなど別の手段でも本人であることを確かめるログインの仕組み
DM(ダイレクトメッセージ)
SNSで、特定の相手にだけ送るメッセージ
フィッシング
実在の会社などを装った連絡で偽のページに誘い、認証情報などを入力させる手口
Facebookページ
企業や自治体などが、個人のアカウントとは別に作る、組織の発信用のページ
WhatsApp
Meta社が運営するメッセージのアプリ。長野県の相談センターが相談業務で使っていた
連携アプリ
予約投稿や分析などのために、SNSのアカウントを操作する権限を渡した外部のアプリ

参考文献

このレポートは2026年10月29日時点の公開情報にもとづきます。各組織が続報を出した場合は、内容を更新します。