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情報漏えい原因調査レポート No.004

パーク24「タイムズカー」の不正アクセスで、免許証の画像146万件はなぜ外部に送られたのか

カーシェア「タイムズカー」のWebシステムが脆弱性を突かれ、会員の情報662万8007件と、運転免許証などの本人確認書類の画像146万4800件に、外部へ送信された痕跡が見つかった。画像は暗号化されていたが、会員期間中と退会後7年間、保管されていた。検知から第5報までの経緯、流出の中身、保管のルール、見舞金と特別損失を、公開情報で追う。

2026年10月26日 公開KEYRING編集部2026年10月26日時点の公開情報にもとづく読了の目安 約25分
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パーク24株式会社(タイムズカーを運営するグループ)park24.co.jp

数字で見る今回の事案

出典は各数字の下に記載
外部送信の痕跡があった会員の情報
662万件

6,628,007件。氏名、住所、生年月日、電話番号、メールアドレス、運転免許情報(第5報)

外部送信の痕跡があった本人確認書類の画像
146万件

1,464,800件。暗号化して保管していた。ほかにアクセスだけの痕跡が891,602件(第5報)

画像の保管期間
7年

会員期間中と、退会後7年間。今後は登録確認の完了後すぐに消す(第4報・第5報)

見舞金
3,000円相当

画像の外部送信の痕跡が確認された人が対象。現金または金券(第5報)

計上する特別損失
55億円

見舞金と対応費用。2026年10月期の純利益予想を440億円から385億円に下げた(パーク24 IR)

集団訴訟のサイトへの登録
9万人超

10月23日時点。弁護士が提訴の意向を明らかにした(時事通信)

エグゼクティブ
サマリー

  1. 原因は、Webシステムの脆弱性だった。パーク24は第5報で、外部専門機関のフォレンジック調査の結果、Webシステムに存在した脆弱性が悪用されたと判断した。攻撃者は侵入後にシステム内の情報を探し、そこで得た情報を使ってデータベースとファイル領域に入った。脆弱性の種類や攻撃の詳しい方法は、二次被害を防ぐためとして公表していない。
  2. 免許証などの画像は、暗号化されたまま外に送られた。外部送信の痕跡があった画像は146万4800件で、アクセスだけの痕跡が89万1602件あった。パーク24は、すぐに画像が見られる状態になったわけではないとしつつ、将来の復号の可能性は完全には否定できないとしている。
  3. 画像は、会員期間中と退会後7年間、保管されていた。本人確認のほか、不正利用が疑われる事案への対応や問い合わせ対応に使うためだった。パーク24は登録確認の完了後すぐに消すルールに改め、保有中の画像を10月末までに削除する。
  4. 見舞金は1人3,000円相当、特別損失は55億円。見舞金の対象は画像の外部送信の痕跡があった人に限った。一方、集団訴訟に向けたサイトの登録者は9万人を超え、準備を進める弁護士は金額が低すぎると述べている(時事通信)。
  5. 免許証の再交付では、流出した情報は取り戻せない。時事通信によると、再交付で変わるのは顔写真と番号の末尾だけで、住所や生年月日はそのままだ。画像だけでのなりすましを防ぐ仕組みとして、2027年4月から、ICチップの読み取りによる本人確認への移行が進む。

1はじめに

2026年9月25日、パーク24は、グループが運営するカーシェアリング「タイムズカー」のWebシステムで不正アクセスを検知し、会員の個人情報が漏えいした可能性があると発表しました。9月28日の第2報で漏えいしたアカウントを約660万件、29日の第3報で運転免許証画像などの本人確認書類が漏えいしたアカウントを約160万件と公表し、10月23日の第5報で、外部専門機関の調査結果として最終の件数を示しました。

第5報によると、氏名や住所、運転免許情報などを含む662万8007件に、攻撃者がアクセスし外部に送信した痕跡がありました。暗号化して保管していた本人確認書類の画像は、146万4800件に外部送信の痕跡がありました。調査の過程で、ポイントサービス「タイムズクラブ」のWebシステムへの不正アクセスも見つかっています。

このレポートは、パーク24の第1報から第5報、適時開示、警察庁と個人情報保護委員会の資料、報道をもとに、次の問いを順に扱います。KEYRINGの速報記事(No.0161、No.0274)も、あわせてご覧ください。

  • 何が、いつ、どの順番で起きたのか
  • どの情報が、何件、外部に送られたのか
  • 侵入の原因について、何が公表され、何が公表されていないのか
  • なぜ免許証の画像が、退会後も残っていたのか
  • 見舞金と訴訟は、どう動いているのか
  • 利用者と企業は、いま何を確かめればよいのか
調査の方法と範囲

2026年10月26日までに公開された情報を対象にしました。件数は第5報の表の値をそのまま使い、編集部が計算した値はその旨を記しています。脆弱性の種類や攻撃の手順など、パーク24が公表していないことは「公表されていない」と書き、推測では埋めていません。

2検知から第5報までの経緯

パーク24は、検知した当日に第1報を出し、個人情報保護委員会に報告しています。件数は3日後、本人確認書類の件数は4日後に公表しました。最終の件数は、フォレンジック調査を終えた10月23日の第5報で示されました。

図表1パーク24の発表と対応(2026年)
  1. 9月25日 9:07
    不正アクセスを検知し、当日に第1報

    調査を始め、対象のサーバーを隔離し、不正アクセスの経路を遮断した。外部専門機関のフォレンジック調査を始め、個人情報保護委員会に報告し、問い合わせ窓口を開いた。第1報は、漏えいの可能性がある情報に氏名、住所、免許情報、本人確認書類などを挙げた。

    出典:パーク24 第1報・第5報
  2. 9月26日 7:25
    経路の遮断と、遮断後のアクセス不能を確認

    攻撃元からの通信を遮断し、侵害を受けた環境と関連する環境の切り離しを終えた。第1報に追記した。

    出典:パーク24 第1報(追記)・第5報
  3. 9月28日
    第2報:約660万件が漏えい

    第三者に取得されたことを確認したとして、漏えいしたアカウントを約660万件と公表。警察への相談を始め、国土交通省に一報した。既存会員への案内を始めた。

    出典:パーク24 第2報・第5報
  4. 9月29日
    第3報:本人確認書類は約160万件

    運転免許証画像、現住所確認書類の画像、学生証画像、家族確認書類の画像が漏えいしたアカウントを約160万件と公表。該当する会員へのメールでの案内を始めた。

    出典:パーク24 第3報
  5. 10月1日・2日
    退会者と法人会員への案内を始める

    10月1日に退会者、2日に法人会員への案内を始めた。

    出典:パーク24 第5報
  6. 10月16日
    第4報:画像を保有しないルールへ

    本人確認書類の画像を、会員登録の完了後は保有しないルールに改め、保有中の画像を10月末までに削除すると発表。第3報で「2週間程度を目処」としていた、会員ごとの漏えいの詳細についての個別の案内は、調査に時間を要しているとして10月23日に変更した。

    出典:パーク24 第4報
  7. 10月23日
    調査を終え、第5報。見舞金と特別損失

    フォレンジック調査を終え、最終の件数と原因を公表。画像の外部送信の痕跡があった人に3,000円相当の見舞金を渡すとし、同じ日に特別損失55億円の計上を開示した。

    出典:パーク24 第5報、適時開示

9月28日には国土交通省にも一報を入れています。カーシェアは車を貸し渡す事業で、所管の官庁への連絡も対応の一部になりました。第1報から第2報までの3日間で、「漏えいした可能性」は「第三者に取得されたことを確認」に変わりました。一方、本人確認書類の画像の件数は、第3報の約160万件から、第5報で外部送信の痕跡がある146万4800件へと絞り込まれています。

3何が外部に送られたのか

第5報は、漏えいの中身を6つの区分に分けて示しています。①〜⑤はタイムズカーのWebシステム、⑥は調査の過程で見つかったタイムズクラブのWebシステムです。

図表2第5報が示した漏えいの区分と件数
区分痕跡項目と件数
① 会員の情報タイムズカーアクセスと外部送信氏名、住所、生年月日、電話番号、メールアドレス、運転免許情報。6,628,007件
② 属性・識別情報タイムズカーアクセスと外部送信法人会員の所属部署名 3,677件、タイムズカー会員番号(IC管理番号)8件、タイムズビジネスカード番号 113件、連携サービスID 4件
③ 認証情報タイムズカーアクセスと外部送信ハッシュ化されたパスワード 4件
④ 本人確認書類の画像タイムズカーアクセスと外部送信暗号化された画像 1,464,800件
⑤ 本人確認書類の画像タイムズカーアクセスのみ暗号化された画像 891,602件(④と⑤の計 2,356,402件)
⑥ タイムズクラブの情報タイムズクラブアクセスと外部送信氏名・住所・生年月日・運転免許情報 5件、タイムズクラブカード番号 19,510件、タイムズビジネスカード番号 12件、連携サービスID 135,436件、クレジットカード番号の下4桁 28件

出典:パーク24 第5報。①には、タイムズビジネスサービスに「カンタン入会」で入会し、駐車場だけを契約している人の情報も含まれる。⑥の合計は154,991件(毎日新聞。編集部でも合計を確認)

第2報で9件としていた連携サービスIDは、調査の結果4件になりました。漏えいの対象に挙げていたJR西日本グループの会員サービス「WESTER ID」は0件でした。パーク24はクレジットカード情報を自社で持たない仕組みにしており、クレジットカードの番号の全桁とセキュリティコードは保持していないため、不正に使われるおそれはないとしています。パスワードは復元できない形式で保管していたと、第2報の時点から説明しています。

①の注記にあるとおり、タイムズカーのWebシステムは、法人向けの「タイムズビジネスサービス」に「カンタン入会」で入った人の契約情報も管理していました。このため、駐車場だけをクレジットカード払いで契約している人も対象に含まれています。カーシェアを使ったことがない人にも、通知が届き得るということです。また⑥のタイムズクラブで外部送信の痕跡があった項目の多くは、他社の提携サービスと連携するための識別番号(13万5436件)とカード番号でした。会員管理とシステム運用のための識別情報にも、アクセスと外部送信の痕跡があったとしています。

本人確認書類の画像:160万件から146万件へ

第3報は、運転免許証画像、現住所確認書類(公共料金の請求書など)の画像、学生プランの学生証画像、家族プランの家族確認書類の画像を挙げていました。第5報で、その中身は次のように分けられました。

図表3暗号化された本人確認書類の画像(タイムズカー)
攻撃者がアクセスした暗号化画像 計 2,356,402件 1,464,800件 外部送信の痕跡あり(約62%) 891,602件 アクセスのみ(約38%) この画像の持ち主が見舞金3,000円相当の対象(人数は公表されていない) 第3報(9月29日)の時点では「本人確認書類が漏えいしたアカウント 約160万件」

出典:パーク24 第3報・第5報。割合は編集部が計算。帯の長さは件数に比例

パーク24は、画像を暗号化して保管していたため、痕跡があってもすぐに画像の内容が見られる状態になったことを意味しないと説明しています。同時に、外部に送られた暗号化データは「将来的な復号の可能性を完全に否定できるものではありません」とも書いています。暗号化の鍵をどこで、どう管理していたかは公表されていません。

4公表された原因:Webシステムの脆弱性

第5報は、発生原因を次のように説明しています。「外部専門機関によるフォレンジック調査の結果、本事案はWebシステムに存在した脆弱性が悪用されたことにより発生したものと判断しております」「攻撃者は当該脆弱性を悪用してシステムへ侵入した後、システム内の情報を探索し、取得した情報を利用してデータベースおよびファイル領域へアクセスしていたことを確認しております」「攻撃手法の詳細やシステム構成等については、二次被害防止の観点から公表を差し控えます」。

図表4第5報が示した攻撃の流れ
攻撃者 Webシステムの脆弱性を悪用 (種類は公表されていない) 侵入 タイムズカーの Webシステム 情報の探索 システム内の情報を探し、 使える情報を取得 データベース ファイル領域 会員情報・暗号化画像 外部への送信(痕跡を確認) 9月25日 9:07 検知・隔離 9月26日 7:25 遮断と不能確認 侵入が始まった日時は公表されていない

パーク24 第1報(追記)・第5報をもとにKEYRING編集部が作成。どの情報を取得してデータベースに入ったか、外部送信がいつからいつまで続いたかは公表されていない

第5報は、攻撃者が「取得した情報を利用して」データベースとファイル領域に入ったと書いています。何を取得したかは公表されていません。対策として、パーク24は確認された侵害経路への対策を終え、「同一構成システムへの点検および脆弱性対策」と、監視・検知の強化を行ったとしています。

点検の対象になったシステムの数や名前は公表されていません。Webシステムの脆弱性の作り込みを防ぐ手引きには、IPAの「安全なウェブサイトの作り方」があります。

5分かっていること、公表されていないこと

図表5公式発表で確認できる範囲(10月26日時点)
項目公表されていること
原因Webシステムに存在した脆弱性の悪用(第5報)
脆弱性の種類・攻撃の手順公表されていない。二次被害防止の観点から差し控えるとしている
侵入が始まった日時公表されていない。検知は9月25日9時7分
暗号化の鍵の管理公表されていない
件数最終件数を公表。現時点で追加の対象範囲は確認されていない(第5報)
情報の売買・公開把握している範囲では確認されていない。ダークウェブを含む監視を続ける
当局への届け出9月25日に個人情報保護委員会へ報告、9月28日に警察へ相談を始め、国土交通省へ一報
ガバナンスの検証社外取締役を中心に外部専門家を加えた調査委員会で、内部統制とガバナンスの観点から検証する。強化策は年内をめどに公表

出典:パーク24 第1報〜第5報

パーク24は、想定されるリスクとして、フィッシングメールやフィッシングサイトによる詐欺、なりすましによる申し込みや問い合わせ、不正な勧誘、個人情報の悪用を挙げています。

6免許証の画像の保管期間と、その目的

パーク24は、会員登録のときに提出された運転免許証などの画像を、暗号化して、会員期間中と退会後7年間保有していました。目的は、登録時の本人確認に加えて、不正利用が疑われる事案への対応、問い合わせ対応、各種の本人確認業務だったと説明しています。画像は社内ルールに基づいて管理し、保有期間も会社が定めた基準に沿って運用していたとしています。

図表6本人確認書類の画像の保有ルール
対象これまで変更後
現会員会員期間中は保有登録確認の完了後、すぐに削除
退会会員退会後7年間保有保有しない
いま保有している画像保有不要になったものと、本人の請求があったものを削除申し出の有無にかかわらず、2026年10月末までに削除

出典:パーク24 第4報・第5報。削除後も、将来の問い合わせ対応などのため、保存していた画像との同一性を確かめるための情報は保全するとしている

個人情報保護法に詳しい板倉陽一郎弁護士は、毎日新聞の取材に、今回もっとも大きな問題は企業が利用者の身分証明書のコピーを保管していたことだと述べています。個人情報保護法は、不要になったデータを消去する努力義務を定めています。記事は、カーシェアという事業の性質上、登録時に運転免許証が必要だったとしても、学生証は必要だったのか、身分証明書の情報を保管し続ける必要があったのか、と問いかけています。

第3報が挙げた画像は、運転免許証のほか、現住所を確かめる書類(公共料金の請求書など)、学生プランの学生証、家族プランの家族確認書類でした。プランごとに求める書類が増え、その分だけ保管する画像の種類も増えていました。公共料金の請求書には、免許証とは別の情報が載っていることがあります。

退会した人の画像が残っていたことは、流出の対象が「いまの会員」より広くなった理由の1つです。第2報は、対象に退会済みの人と、入会を申し込んだが何らかの理由で入会を終えていない人も含むとしていました。

7見舞金3,000円相当と特別損失55億円

見舞金の対象は、暗号化された本人確認書類の画像へのアクセスと外部送信の痕跡が確認された人です。会員情報(①)だけが対象だった人は含まれません。パーク24は、画像がすぐに見られる状態になったわけではないものの、将来の復号の可能性を否定できないこと、利用者への影響と負担を踏まえて、この範囲にしたと説明しています。渡し方と時期は検討中で、決まりしだい対象者に知らせるとしています。

①の会員の情報は662万8007件、④の画像は146万4800件で、件数の差は約516万件です(編集部計算)。件数と人数が一致するか、①と④の対象者がどう重なるかは公表されていないため、見舞金の対象にならない人の数は分かりません。パーク24は「今後実害が発生したら、個別に適切に対応する」としています(時事通信)。

図表72026年10月期の業績予想の修正
項目前回予想(6月15日)今回の修正(10月23日)
売上高4,110億円4,110億円(変更なし)
営業利益425億円425億円(変更なし)
親会社株主に帰属する当期純利益440億円385億円(55億円、12.5%の減少)
1株当たり年間配当65円65円(変更なし)

出典:パーク24「特別損失の計上および通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」(2026年10月23日)。百万円単位の値を億円に直した

特別損失5,500百万円は、見舞金と「本事案への諸対応費用」を合わせたものです。見舞金の総額について、時事通信は約44億円の見込みと報じました。ITmediaは、画像の件数と対象者数が同じと仮定した単純計算で約44億円になると書いています。パーク24の開示資料には、見舞金の総額は書かれていません。開示資料は、公表の直後にモビリティ事業で会員数の推移に一定の影響が見られた一方、1日あたりの売上高は事案前の水準を保っているとしています。

8利用者の動き:再交付と集団訴訟

免許証の再交付が相次いだ

時事通信によると、公表のあと、各地の警察や運転免許センターに「免許証の情報を書き換えたい」といった問い合わせが多く寄せられました。再交付は原則として紛失や記載事項の変更の場合に限られますが、道路交通法施行規則は公安委員会が「相当な事情」と認めれば可能としており、ほぼ全ての窓口で再交付を認める運用をしているといいます。

ただし、再交付で変わるのは顔写真と、12桁の番号のうち再交付の回数を示す末尾の番号だけです。住所や生年月日は変わらず、事業者の側も更新後の免許証かどうかを確かめる手段がないため、犯罪を防ぐ効果は限られると、時事通信は伝えています。警察庁は、金融機関などに手続き時の本人確認の徹底を求め、個人には「詐欺や個人情報の悪用が疑われる場合はすぐ警察に相談してほしい」と呼びかけています。

警察庁の楠芳伸長官は10月8日の記者会見で、基本的なセキュリティ対策の徹底を求め、詐欺電話を遮る機能を持つ防犯アプリの活用、パスワードの更新、不審なメールを開かないことなどを呼びかけました。時事通信は、タイムズカー以外にも不正アクセスによる流出が相次いでおり、特殊詐欺の電話や、流出元の企業をかたる偽のメールの増加も想定されると伝えています。

集団訴訟の登録は9万人を超えた

東京弁護士会の牧野裕貴弁護士は、集団訴訟に向けた専用サイトを開設しました。産経新聞によると、10月2日午後1時までに1万人以上が登録し、時事通信によると、10月23日時点で9万人を超えました。牧野弁護士は同日、運営会社などに損害賠償を求めて提訴する意向を明らかにし、時事通信の取材に「成り済ましに対する不安や(被害)申告などの対応を考えると(見舞金額が)低過ぎる」と述べています。

9本人確認の画像が狙われたほかの事案

本人確認のために集めた身分証の画像や情報が流出した事案は、海外でも続いています。KEYRINGの速報で扱ったものを挙げます。

図表8身分証の画像や運転免許の情報が関わった事案(KEYRINGの速報から)
公表組織内容
2021年8月T-Mobile US(米国)攻撃者が試験環境から入り、顧客データのあるサーバーに到達。社会保障番号、運転免許証などの情報が持ち出された(No.0002)
2025年7月Tea Dating Advice(米国)認証なしで読める保管場所から、本人確認の自撮りと身分証の画像を含む約7万2,000点の画像が取り出され、掲示板に公開された(No.0031)
2026年9月IDScan.net(米国)小売店やレンタカー会社に身分証の読み取りサービスを提供する会社で、クラウドの顧客情報が複製されたおそれ。闇市場では運転免許証の画像1億5300万件超が売られていると報じられた(件数は未確認)(No.0108)
2026年9月〜10月パーク24(タイムズカー)本件。暗号化された本人確認書類の画像1,464,800件に外部送信の痕跡(No.0161、No.0274)

出典:KEYRING 情報管理速報の各記事と、そこに載せた出典。原因別の一覧は不正アクセスによる情報漏えい事故の一覧

いずれも、本人確認に使った身分証の画像や情報が、事業者の手元に残っていた事案です。パスワードと違い、氏名、生年月日、顔写真は本人が変えられません。

10報告の義務と、本人確認のルールの変化

個人情報保護委員会への報告

個人情報保護法は、不正の目的をもって行われたおそれがある行為による漏えい等や、本人の数が1,000人を超える漏えい等について、個人情報保護委員会への報告と本人への通知を義務付けています。速報の目安は事態を知った時点から概ね3〜5日以内、確報は30日以内、不正の目的によるおそれがある場合は60日以内で、事態を知った日を1日目として数えます(ガイドライン通則編)。パーク24は検知の当日(9月25日)に報告し、調査を終えた10月23日に最終の件数を公表しました。本人への案内は、既存会員(9月28日)、本人確認書類の漏えいが確認された会員(9月29日、メールで案内。第3報)、退会者(10月1日)、法人会員(10月2日)の順に始めています。

2027年4月から、金融機関などにICチップを読み取る本人確認が義務付けられる

時事通信によると、来年4月からは改正犯罪収益移転防止法により、金融機関などにマイナンバーカードや運転免許証のICチップを読み取る本人確認が義務付けられ、画像だけでなりすますことはできなくなります。警察庁は制度の周知と積極的な導入を働きかける方針です。警察庁の施行規則の改正に関するQ&Aも、ICチップ情報の読み取りによる確認の方法を説明しています。義務がかかる事業者と取引の範囲は、犯罪収益移転防止法と施行規則によります。

パーク24が今回、登録確認の後に画像を残さないルールに変えたことで、確認の方法と保管の範囲を事業者がどう決めるかが、ほかのサービスでも問われることになります。

11影響の範囲にかかわる4つの事実

1Webシステムの脆弱性が悪用された

パーク24は、Webシステムに存在した脆弱性が悪用されたと判断しました(第5報)。脆弱性の種類は公表されていません。

2侵入後、データベースとファイル領域にアクセスされた

攻撃者は侵入後に情報を探し、取得した情報を使ってデータベースとファイル領域に入りました(第5報)。何を取得したかは公表されていません。

3画像は、会員期間中と退会後7年間保管されていた

画像は会員期間中と退会後7年間保管する運用だったため、退会した人の画像も対象に含まれていました(第2報・第4報)。外部送信の痕跡がある画像146万件のうち、退会者の分が何件かは公表されていません。

4画像は暗号化されたまま外部に送られた

パーク24は、すぐに画像が見られる状態になったわけではないとしつつ、将来の復号の可能性は完全には否定できないとしています(第5報)。鍵の管理は公表されていません。

この整理は、公開された情報をもとにKEYRING編集部が行ったものです。攻撃の詳細が公表されれば、見直します。

12利用者と企業が取るべき対応

パーク24と警察庁の呼びかけ、報道をもとに、確かめる順番を並べます。

図表9タイムズカー・タイムズクラブの会員(退会者を含む)が確かめる順番
  1. いますぐパーク24やタイムズを名乗る連絡に注意する

    パーク24は、メール、SMS、電話でパスワードやクレジットカード情報を聞くことはないとしている。身に覚えのない連絡のリンクや添付ファイルを開かず、パスワード、認証コード、カード情報を入れない。

  2. いますぐ届いた案内の内容を確かめる

    パーク24は対象者に個別に通知している。自分が対象か、どの区分かが分からなければ、専用窓口(0120-25-8924、24時間。第5報)か、タイムズカーの問い合わせフォームで確かめる。

  3. 今週中同じパスワードを使い回していれば変える

    パスワードは復元できない形式で保管され、外部送信の痕跡は4件とされている。それでも、ほかのサービスと同じパスワードを使っていれば、変えておく。

  4. 続けて身に覚えのない契約や請求に注意する

    なりすましによる申し込み、不正な勧誘が想定されている。身に覚えのない契約、請求、郵便物があれば、詐欺や悪用を疑い、警察に相談する(警察庁)。

  5. 判断して免許証の再交付の効果を理解して決める

    再交付で変わるのは顔写真と番号の末尾だけで、住所や生年月日は変わらない。手間と効果を比べたうえで判断する。(時事通信の報道から編集部が整理)

出典:パーク24 第2報・第5報、時事通信(2026年10月11日配信)をもとにKEYRING編集部が作成

企業が確かめること

本人確認の画像を集める事業者
  • 確認が済んだ画像を、いつ、どの手順で消しているか
  • 退会した人の画像を残す理由を、目的ごとに書き出しているか
  • 学生証など、目的に照らして本当に必要な書類だけを集めているか
Webシステムの担当
  • 公開しているシステムの脆弱性を、定期的に点検し、直しているか
  • システム内で得られる情報(接続情報や鍵など)から、データベースに届かない構成か
  • 同じ構成のシステムを一覧にし、まとめて点検できるか
経営層
  • 暗号化の鍵を誰が持ち、どこで使っているかを説明できるか
  • 流出の対象者と見舞金の範囲を、どの基準で決めるかを準備しているか
  • 社外の目でガバナンスを検証する仕組みを持っているか

13提言

この調査から、KEYRINGは次の4つを提言します。

1本人確認の画像は、確認が済んだら消す

確認の記録として残すのは、確認した日時と方法、同一性を確かめるための情報に絞る。パーク24が10月に改めたルールも、この形をとっている。

2公開の画面と、個人情報の置き場所を分ける

第5報は攻撃者が何を取得したかを公表していない。一般的な備えとして、公開しているシステムの中で得られる情報(接続情報や鍵など)から、個人情報の置き場所に届かないようにしておく。

3暗号化は、鍵の管理とあわせて説明できるようにする

暗号化の鍵をどこで管理し、誰が使えるかを、事前に確かめて説明できるようにしておく。

4画像を集めない本人確認に移る

2027年4月から、金融機関などではICチップの読み取りによる確認が求められる。対象外の事業でも、画像を受け取らずに済む方法を検討する。

提言は、公開された情報をもとにKEYRING編集部が考えたものです。

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用語集

脆弱性
ソフトウェアやシステムの欠陥のうち、攻撃に悪用できるもの
フォレンジック調査
記録やログを調べ、攻撃者が何をしたかを後から明らかにする調査
外部送信の痕跡
データがシステムの外に送られたことを示す記録。今回は、アクセスだけの痕跡と分けて数えている
暗号化
鍵がなければ読めない形にデータを変えること。鍵が漏れれば、元に戻される
ハッシュ化
パスワードなどを、元に戻せない形の値に変えて保存すること
本人確認書類
運転免許証、現住所を確かめる書類、学生証など、本人であることを示すために提出する書類
特別損失
通常の事業とは別に、一時的に生じた損失として決算に計上するもの
ICチップの読み取り
マイナンバーカードや運転免許証に埋め込まれたチップの情報を読み、券面の偽造を見分ける確認の方法

参考文献

このレポートは2026年10月26日時点の公開情報にもとづきます。パーク24は情報セキュリティとガバナンスの強化策を年内をめどに公表するとしており、内容は今後の発表で変わる可能性があります。新しい情報があれば更新します。最終閲覧日はいずれも2026年10月26日です。